岐路に立つ豪産牛肉の対日輸出、米国産解禁視野にさらに縮小へ

 豪農業輸出の主力、牛肉の対日輸出の縮小傾向が顕著になってきた。米国産牛肉が2003年に牛海綿状脳症(BSE)問題で全面禁輸となって以来、日本の輸入牛肉市場で約9割の圧倒的シェアを誇ってきたが、06年をピークに2年連続で減少する見通しだ日本のスーパーマーケットでは、オージービーフ(豪州産牛肉)が豪州よりも安く売られている――。豪生産者にとっては衝撃的な内容の記事が、9日付の農業専門紙ファーム・ウィークリー紙に掲載された。同紙は、東京と西オーストラリア州パース市内の2つのスーパーの生肉売場で販売されている豪牛肉の4つの部位について比較し、「日本では豪州よりも1キロあたり8豪ドル程度安い場合がある」と報じた。例えば、パースで同21.99〜24.99豪ドルで売られている豪産ステーキ用しり肉は、日本では同14.75豪ドルだったという。しかし、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)の近藤・日本市場担当アナリストは、「MLAは個人や会社の価格決定には関与しない」と断った上でこう指摘した。「記事の比較には根拠が乏しく、公正さに疑問がある。日本と豪州の消費者では好む肉のタイプが異なり、需要の差もあるので一概に言えない」。確かに、豪州国内の一般的な牛肉と比べて、日本で売られているほぼ同じ部位の豪牛肉が安いというのは極端な見方のようだ。農業産業振興機構(ALIC)の市場調査によると、日本の豪牛肉の平均小売価格(今年2月の最新データ)は、肩ロースが1キロ当たり1,800円、サーロインが同3,040円。一方、本紙が調べたシドニー市内中心部の大手スーパー、コールスの豪牛肉小売価格は、肩ロースが同9.49〜12.99豪ドル、サーロインが同21.99〜27.99豪ドルだった。ただ、単純に比較はできないものの、日本の輸入牛肉に対する関税率が38.5%であること、日本までの物流コストなどを考慮すれば、日本の豪牛肉は割安と言える。日本市場で激しい価格競争にさらされていることは確かなようだ。■ピークの2年前から17%減と予測MLAの統計によると、02年に23万7,000トンだった豪牛肉の対日輸出量は、03年12月の米牛肉禁輸措置を受けて、04年は39万3,500トンと大幅に拡大、06年には40万5,800トンと過去最高を記録した。日本の農水省の品目別輸入実績によると、06年の豪牛肉は輸入牛肉全体の実に88%と圧倒的なシェア率を占めている。しかし、◇特定危険部位の除去◇月齢20カ月以下であること――を条件に、05年12月に米国産牛肉の輸入が限定的に再開されると、07年の豪牛肉の対日輸出量は37万7,900トンと前年比で約7%減少した。MLAは今年2月に発表した豪牛・羊肉産業予測で、08年も33万5,000トンと前年比11%減となる見通しを明らかにした。最盛期の06年比で17%の下落である。MLAの近藤氏は「牧草の育ちが悪くなり、生産者が肉牛を早く手放す結果となったため、干ばつは逆に生産量の拡大に寄与した。影響が大きいのはむしろ、穀物価格の上昇でコストが増したこと。豪ドル高も逆風だ」と説明する。日本向けの主力は、グレインフェッド(穀物飼育)牛。穀物の国際商品価格が高騰していることが、生産コストを押し上げ、日本での豪牛肉の競争力を低下させた。さらに豪州にとって気がかりなのは、限定輸出再開後も対日輸出量がそれほど伸びていない米国産牛肉の全面解禁へ向けた動きだ。近藤氏によると「米国産の輸出が再開されれば(豪牛肉に)顕著な影響が出るのは避けられない」。米国は日本に対して、20カ月の月齢制限の完全撤廃を求めている。日米の意見に食い違いはあるものの、現在、両国が科学的資料に基づいて検討している段階だという。近い将来、段階的な制限緩和に踏み切る可能性がある。一方、豪牛肉は第3の輸出先である韓国でも強敵の米国と対峙している。米韓は今月11日、日本と同様に韓国が実施している月齢制限の撤廃と、韓国で需要が高い骨付き牛肉の輸入再開に向けて政府間協議を再開した。米韓が昨年、合意した自由貿易協定(FTA)も豪州にはマイナス要因。両国議会が米韓FTAを批准すれば、現在40%の韓国の牛肉関税は段階的に下げられ、15年後にはゼロになる。MLAマネジング・ディレクターのパーマー氏は今月、バーク農相に同行して訪韓、豪韓FTAの交渉開始を訴えた。BSE問題で漁夫の利を得た格好の豪牛肉業界は、これからが正念場となりそうだ。

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