豪ドル安も対日牛肉輸出低調、急激な為替変動、市場に乱気流

 このところの急激な円高豪ドル安の進行にもかかわらず、豪産牛肉の対日輸出が低空飛行を続けている。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、10月の対日輸出量は前年同月比で約1割減にとどまる見通しだ。金融危機と為替レートの急激な変動により、市場が不安定な状態に陥っていることが背景にある。豪ドルの対円相場は、7月末まで1豪ドル100円以上の水準で比較的安定していたが、8月に入って100円を割り込み、9月15日の米投資銀リーマン・ブラザーズ破たんを機に急落。10月24日にはついに1豪ドル56円台まで下げた後、乱高下を繰り返している。ここまで豪ドルが円に対して値を下げると、単純に考えれば、豪農業資源経済局(ABARE)の調査で豪農業最大の主力商品(2006/07年度までの3年間の平均)である牛肉の対日輸出攻勢が、一気に加速しそうなものだが――。■厳しい輸出環境、出荷価格も下落MLAの日本市場アナリストである近藤氏は「豪農水省発表の10月27日付統計によると、(同時点での)10月の豪産牛肉(子牛を含む)の日本向け輸出量は2万5,615トン。現時点では、前年同月比約10%減の水準に落ち着くと予測している」と話す。追い風が吹くどころか、日本市場の豪牛肉需要は昨年実績を下回る水準に縮小しているのだ。同氏は「中・長期的に見れば、豪ドル安は豪牛肉の価格競争力を高めるプラス要因になる。しかし、世界経済の不安材料となっている金融危機と、このところの急激な円高豪ドル安は、(日本の)市場に非常に大きな混乱を招いており、現時点では豪牛肉の対日輸出に良い影響を与えていない」と説明する。また、MLAが10月31日に発表した市場リポートも、米ドル換算の豪産冷蔵牛肉価格は前週比で3〜8%下落したものの、不安定な豪ドル相場の影響で、卸売業者の買付意欲は低調だとしている。一方、日本とともに主要輸出先である米国・韓国向けも精彩を欠く。同リポートによると、米国でも不安定な為替相場を背景に輸入業者が値決めを渋っているという。また、30日付の同リポートによると、韓国市場の豪産牛肉のシェアは、6月の米国産牛肉輸入再開の影響で72%(5月)から52%(9月)に低下した。こうした輸出需要の縮小と、少雨で牧草が不足したことによる豪南部の供給増加が重なり、豪国内セールヤード(生産者が生体肉牛を売却する市場)の出荷価格は9月のピークから10〜15%下落した。全国の出荷頭数は10月の最終週に前週比で24%減と急減したものの、出荷価格の全国平均は同3〜6%減となり、価格下落は止まらなかった。■長期の需要喚起に期待豪ドル安にもかかわらず、足元のデータを見る限り、あまり良いニュースは聞こえてこない豪産牛肉。対日輸出の今後の見通しはどうか。MLAの近藤氏は「供給側の事情よりも買い手側の需要喚起策がカギを握る」と指摘する。既に日本の大手スーパー数社は、円高還元セールで豪牛肉の特価販売を始めており、割安感の出てきた豪牛肉の人気が消費者の間で広がり、企業がビジネスチャンスを見出せば、好結果に結びつくとみている。ただ、個人消費の低迷と、安価な豚・鶏肉への消費性向の変化に加えて、今回の金融危機という状況下では、「豪ドル安=安価な牛肉の輸出攻勢=豪産牛肉の需要拡大」といった楽観的な図式を描くのは難しいという。近藤氏は「豪州産と米国産の競争は今後ますます激化するだろう。しかし、米国産の輸出拡大で消費者の選択肢が増えれば、牛肉市場全体の活性化につながる。より多くの消費者が牛肉の栄養価の高さとおいしさを認識して、食べる機会を増やしてもらえれば」とコメント。より長期的な視点で日本人の牛肉消費を刺激し、豪産牛肉の商機拡大につなげる戦略だ。

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