豪産牛腸、こてっちゃん救う、BSEで休止の庶民の味復活

 牛腸を原材料に使用した人気焼き肉製品「こてっちゃん」。BSE(牛海綿状脳症)発生による米国産牛肉の輸入停止で一時販売休止に追い込まれたが、原材料を豪州産に切り替えて復活を遂げた。製造販売元のエスフーズ(兵庫県西宮市)に話を聞いた。焼き肉店では庶民の味として人気が高い牛腸。下処理が面倒なため家庭の食卓には普及しなかったが、こてっちゃんは1982年に下処理済みの味付け牛腸のパック製品として発売され、そのまま焼くだけで味わえる手軽さが受けた。有名人を起用したユニークなテレビ・コマーシャル(CM)も人気に火を付け、エスフーズを代表するヒット商品になった。ところが、2003年12月に原材料の供給が突然絶たれた。米国でのBSE発病を受けて日本政府が米国産牛肉の全面輸入禁止に踏み切ったからだ。04年5月には、米国産に頼っていた原材料の在庫が底を尽き、一時製造中止に追い込まれた。大手外食チェーン吉野家のメニューから主力の牛丼が消えたのもこのころだ。05年1月、豚大腸を原材料に使った新商品「とんてっちゃん」を投入するなどしてピンチをしのいだが、製造中止の傷は深かった。■遜色ない味、課題は数量確保など同社経営企画室の辻氏は、「米国産原材料の輸入ストップで、看板商品であるこてっちゃんは生産できなくなった。経営は非常に厳しい状態になった」と当時を振り返る。だが、最強の稼ぎ頭を失った同社に、そのまま指をくわえて見ている余裕はなかった。起死回生の策として、豪州産の牛腸に白羽の矢を立てた。辻氏は肝心の味について、豪州の穀物飼育牛なら「米国産と比べて遜色はなかった」と語る。むしろ苦労したのは数量の確保。米国には牛臓物を処理する専門の工場があり、日本への供給システムが整っていたが、豪州からの牛腸の仕入れはゼロからの試行錯誤だった。価格も豪州産牛腸は従来の米国産より高かった。こうした困難に立ち向かいながら、06年8月、豪州産牛腸を使った新生こてっちゃんが地域限定で店頭に並んだ。販売中止から2年3カ月ぶりの復活だった。販売地域は07年3月には関西・中四国地方へ、今年初めには約4年ぶりに日本全国へと拡大。冬の鍋シーズンを控えた今年9月には、「こてっちゃん牛もつ鍋」も5年ぶりに復活を果たした。■豪産牛腸、対日輸出は90倍に米国産牛肉禁輸を境に、豪州産牛臓物の対日輸出は拡大している。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、腸や胃、舌、レバー、スジ、テールなどの豪州産牛臓物の対日輸出量(1〜11月)は、03年の1万3,022トンから08年は2万4,208トンに増加。特に牛腸の伸びは顕著で、03年にはわずか37トンだったのが、08年は3,347トンと約90倍に激増した。MLAの日本市場担当アナリストである近藤氏は、「消費低迷、ガソリン高、飲酒運転取締り強化などから郊外型焼肉レストランの経営状況が厳しくなっている中、こてっちゃんが豪州産内臓物を使用して売り上げを伸ばしているのは嬉しいニュース」と歓迎している。■まだ長い完全復活への道ただ、完全なV字回復までの道のりはまだ長い。「現在は豪州産のほかにブラジル産も仕入れて数量の確保に努めているものの、(過去の)米国産の数量と比較すると、供給は大幅に減っている。もっとプロモーションしたくてもできない。つらい状況だ」と前述の辻氏。宣伝しすぎると需要に供給が追いつかなくなるというジレンマがある。また、仕入れ価格の上昇を反映して、小売価格も一時販売中止前の約2倍に引き上げており、割高感はある。現在、月齢20カ月以下の制限がある米国産が将来全面解禁されれば、数量とコストの面で有利な米国産に徐々に切り替わっていくのはやむを得ないという。辻氏はそれでも、「豪州産がなければ今のわれわれはなかった。助けられた」と胸をなで下ろす。豪州産牛腸が庶民の味を危機から救ったことは確かなようだ。

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