食肉生産の環境対策をPR、温室効果ガス削減や緑化強調

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)はこのほど、牛・羊など食肉生産者の環境保護策に関する広報キャンペーンを開始した。畜産生産者の実情を肌で知らない都市部の居住者を対象に、メディアや街頭などで広告展開を行う。家畜生産は二酸化炭素や水資源が循環するサイクルの一部だと主張し、温室効果ガスや水資源、森林破壊など環境問題に対する業界の貢献を訴えている。MLAは先月28日、環境保護のための節電イベント「アース・アワー」に合わせて、環境保護に関する広報活動「わたしたちの環境。わたしたちの取り組み」をスタートした。狙いは消費者に家畜産業の環境対策について消費者の理解を深めることにある。キャンペーンの開始にあたり、自身もクイーンズランド州北部で家業の畜産業を営むMLAのヒートリー会長は、「環境保護は豪州の食肉産業にとって優先課題であり、将来にわたる持続性を維持する上でなくてはならないものだ」として、家畜産業の環境上の利点を強調した。水資源問題についてMLAは、家畜は牧草や飼料の生育に必要な水を含めると生涯に大量の水を使用しているとの批判に対して「実際に必要な水は、生産方法によって牛肉1キロ当たり60〜320リットルに過ぎない」と反論している。豪州の肉牛生産地のほとんどが耕作に適さない土地であり、主要人口密集地からも離れていることから、食糧生産や生活用水と競合することはないという。また、家畜が出すメタンなどの温室効果ガスについては、豪畜産業界は排出量を京都議定書の基準年である1990年比で4.7%削減したとして、環境に対する取り組みの成果を強調した。豪州で同期間に温室効果ガスを削減した産業分野は畜産だけだとしている。さらに、畜産業の将来の環境負荷を軽減する取り組みについても期待を表明した。MLAは連邦政府などと共同で5,000万豪ドルの予算をかけて、植物が光合成によって炭素を閉じ込める「二酸化炭素固定」や、単位量当たりの温室効果が二酸化炭素の約20倍と大きい牛や羊などの家畜が放出するメタンの削減などに関する研究を進めている。■純菜食主義の「食肉は悪」説に対抗MLAの環境キャンペーンは、一部の菜食主義や動物愛護の団体が主張する家畜悪玉論に対抗した格好ともなっている。「野菜を食べよう!環境を守ろう!地球を救え」――とは、公共放送SBSで放映されている意見広告のキャッチ・コピーだ。エネルギーや運輸とともに、家畜は人為的な温室効果ガスの3大排出源の1つであるとした上で、視聴者に肉食をやめて菜食に切り替えるよう呼びかけている。このテレビCMの背後には、乳製品を含む動物由来の食品・製品の消費を一切否定した「純菜食主義」などを掲げる台湾拠点の国際的な新興団体がある。CMの最後に顔を出す女性は、ベトナム出身とされる団体の代表という。家畜は主な温室効果ガス排出源であるとともに、世界的な水不足や食糧難、森林破壊、環境汚染の原因でもあり、野菜だけを食べることによって地球が守られると決め付けている。メインストリームの環境保護運動ではないが、国営放送局にCMを出稿するだけの資金力があることは確かなようだ。ほかにも、派手なメディア露出で存在感を高めている純菜食主義勢力としては、南太平洋で日本の調査捕鯨を妨害する米環境保護団体シーシェパードや、全裸の活動家が檻に入るパフォーマンスで豪州産羊毛製品のボイコットを呼びかける米動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」などがある。これらのグループは国際的に一定の支持を集めており、豪州も一般的に菜食主義や動物愛護への関心が高い。それだけに、地球温暖化の危機を煽り立てながら、食肉は悪と決め付けんばかりのメディア戦略は、生産者にとっては厄介な問題。家畜生産者だけではなく豪農業全体が、マーケティング戦略の一環として、環境に対する取り組みに関する正確な情報を消費者に伝える必要に迫られていると言えそうだ。

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