「Wagyu」は「和牛」?

豪州で正確な食品表示の動き
豪州国内で和牛が広く浸透する中、高級品質が売りの「和牛」ブランドを危ぶむ声が聞かれ始めている。日本では純血種のみを和牛としているが、豪州では独自の等級が存在しており、純血種でなくても和牛と表示されるケースが報告されているためだ。業界では、交雑割合による区分の違いを消費者に明確に表示しようと動き始めている。【NNA豪州編集部】
脂肪が多くやわらかい食感のため、世界最高級の牛肉として知られている和牛は、牧草肥育のアンガス種より30〜50%、フィードロットまたは穀物肥育の牛より75%高い値で販売されている。豪州内の高級レストランに高値で出荷される和牛は、脂肪含有度を示す指標「マーブルスコア」の豪州最高基準値「9」を上回る「9+」だ。そんな和牛が豪州でここ最近、手ごろなレストランなどでも並ぶようになったほか、ファストフードのサブウェイも和牛サンドイッチを販売するなど、市場のすそ野が広がっている。
■交雑種が大半を占める豪州市場
日本は1996年以降、純血種和牛の遺伝子の輸出を禁止しているため、豪州国内では、純血種和牛でも質の良いものを選別し、交配させるなどの措置が取られている。
ただある関係者は、豪州国内で販売されている「和牛」牛肉の95%が交雑種(F1)だと推測している。F1は、和牛とアンガスやヘレフォードとの掛け合いで、和牛の遺伝子は50%。豪州の和牛等級ランクでは最低に位置しているが、「Wagyu」として流通している。一方、日本の基準では100%純血種のみが「和牛」と呼ばれるため、ダブルスタンダードが存在している状況だ。
この事態に、豪州で数少ない純血種和牛を生産しているデイビッド・ブラックモア氏は、純血種とF1では、鶏肉と豚肉ほど異なると主張。消費者保護のためにも正確な食品表示が必要と訴えている。同氏が所有するビクトリア(VIC)州の農場では、2,500頭の純血種和牛を生産している。
国内で高級レストランを3軒経営しているニール・ペリー氏は、純血種と他種両方の和牛を扱っているが、価格は前者のサーロインとヒレステーキは200gで115豪ドル(約9,800円)なのに対し、後者のサーロインステーキは400gで60豪ドルに設定している。量は2倍なのに、価格は約半額だ。同氏も牛肉の種類についてメニューに正確な表記が必要だと主張している。
また、メルボルンで和牛専門店として知られる「Takumi」はNNAの取材に対し、「ブラックモア氏の和牛はメニューに表記して、お客さんに分かるようにしてある。今後さらに表示を行っていくかは、お客さんから質問されたことがないので考えたことがない」と語った。同店ではブラックモア氏の和牛を使用した上カルビ100gを30豪ドル前後で提供している。
豪州和牛協会(AWA)のスティーブ・ベネット会長はNNAの取材に対し、業界内で表示を正確に表記しようとする意識が高まっていることは事実と話す。同協会でも先に、業界関係者と正確な食品表示を提示していくことで合意しており、同会長は「消費者には分かりやすいように、和牛の交種率を50%、75%、100%と表示させることが必要。消費者がどのような表示を望んでいるかも調査していきたい」と述べた。
日本国内でも、「和牛」表示を厳格化する動きもある。国民の多くが「和牛」を国産牛と認識していることから、国産のみを「和牛」と呼ぶことを検討しているようだ。この動きについて、AWAのベネット会長は「把握していない」とコメント。実施されれば豪州内の「Wagyu」は危機的な状況に陥るとの見方を示した。
和牛のブランド地位を維持する動きが広がる中、海外では豪州で初めて和牛の正確表示が始まるかもしれない。

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