印尼向け牛輸出を解禁、前水準への回復は望めず

オーストラリアのラドウィッグ農相は7日、禁止していたインドネシアへの生体牛輸出を「解体施設改善などの条件が整った」として解禁すると発表した。年内の解禁は難しいとの見方も出ていたが、豪州側が事実上妥協し、わずか4週間で矛をさやに戻した形だ。だが、今回の騒動で豪州に対するインドネシア側の不信感を増幅させたともいえ、当初の輸出量を取り戻すのは難しい状況だ。【NNA豪州編集部】

解禁は、生体牛の輸出規準を設けることがその条件。◇牛が残酷に解体されないこと◇輸出業者が解体までのプロセスを監視できるようする◇国際的な解体規準に則ること——などだ。 7月からの輸入許可を出さないとの方針も見せていたインドネシア政府も、豪州側による解禁を受けて、「輸出が実際に再開されれば、すぐにでも輸入許可を出す準備が整っている」との構えを見せた。

だが豪州側が事実上態度を軟化させた背景には、禁輸による国内の経済的損失が数千万豪ドルに上ることや、禁輸に反発していた畜産農家が牛の殺処分も辞さないと表明していたこと、さらには、ラドウィッグ農相の辞任を求める声が日増しに強まり、騒動が担当相の首をめぐる責任問題にまで発展しつつあったことが背景にあるとみられる。事実上、国内からの圧力に手を焼いたためとの事情が透けて見えると言える。

■輸出量は最大40%に

輸出解禁に対する各業界の反応はさまざまだ。生体牛輸出業者と牛生産農家は歓迎しているが、以前の水準にまで輸出量が回復するには時間がかかるとの見方が強い。北部準州放畜業者協会は「今年の輸出量は通常の30〜40%」と予想している。 豪州に残留を余儀なくされた牛を飼育していた牛生産農家は、飼料不足のめに牛を処分せざるを得なくなる問題からは解放されることになる。西オーストラリア(WA)州の一部畜産農家は6日から、「12万豪ドル(約1,040万円)に相当する牛3,000頭を殺処分する」と政府に警告していた。

政府内からは、「禁輸はお粗末な政策だった」とのため息も漏れる。生体牛のトレーサビリティーを整備しただけで、インドネシア側に残酷な処理を撲滅させることを約束させたわけではなく、また牛輸出が再開されても、インドネシアとの外交関係に深刻なしこりが残ったためだ。 また、動物愛護団体からは今回の解禁に対し、「この条件では豪州産の生体牛の安全が確保されていない」と不満の声が噴出している。

RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)は「豪州政府の役人のだれ1人としてインドネシアの解体処理施設に足を踏み入れたことがない」と非難。生体牛解体は豪州国内のみで行われるべきで、生体牛輸出は消滅するべきだとしている。

■輸出大手には大打撃

約1カ月間に及ぶインドネシアへの牛禁輸は、それでも豪州の牛輸出業者には多大な打撃を与えたのも確かだ。 農業ビジネス大手のエルダーズは、9月期の通年決算で最大700万豪ドルの損失を計上すると予想している。エルダーズによると、牛一頭当たりの価格も、禁輸前の5月の800豪ドルから、7月上旬には700豪ドルにまで下落したという。

そのほか、牛輸出の豪最大手コンソリデーテッド・パストラル・カンパニー(CPC)も、昨年12月期通年決算で、純損失が1,900万豪ドル(約16億4,700万円)に上った。また、禁輸前にインドネシアへの牛輸出拡大を主目的として、北部準州で農地買収計画を進めていたが、突然の禁輸で事業が急きょ打ち切りになったという。 豪政府は今回の解禁で、業者側に「生体牛輸出の将来性を確約したメッセージ」を印象づけたいところだ。だが実際は、インドネシアの外交筋は、輸入許可の準備があると言及してはいるものの、豪州産牛の輸入量を大幅に削減するよう国内業者に求める構えだという。

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