ベルツリー・オーストラリア 鈴木崇雄さん②

──豪州では交雑種も和牛なのですか

はい。現状では、和牛交雑であれば100%でも50%でも和牛として売っています。サシが入っているとかも関係なくです。本当に和牛交雑なのかという牛肉も売っていますよ。

豪州和牛協会(AWA)では昨年、交雑度合いが50%なのか100%なのかラベルを貼ることで採決を取りました。しかし票は真二つに割れたのです。50%和牛でもサシが入れば高く売れている、だからあえて50%と言って自らイメージをダウンさせる必要はないというのです。

評価のすべてがマーブリングスコアなので、ある程度肉質がよければ評価が受けられるのです。交雑種でもいいのが出ることもあります。だから、交雑種、フルブラッド関係なくマーブルスコアが9だったらいくらと値段が決まります。そのため交雑種の生産者があえて自分からこれは50%というとデメリットになるのです。

日本では、交雑種のマーブルスコア8と、フルブラッドの8が同じ土俵に立っていることはあり得ません。交雑種は交雑種、和牛は和牛で、そこは全然違うものとして扱われています。でも元々交雑種から始まった豪州の和牛業界なので、そこを区別化することによって、9割以上の商品を切り捨てられるのかといったらできないというのが現状でしょう。

──日本の和牛生産事情とかなり違う豪州の和牛業界は、今後どういった方向に進んでいくべきなのでしょうか

品質のランク付けを豪州国内でも作るべきだと思います。同じ和牛でも日本だったらA2、A3、交雑種はB3など明確な表示がスーパーのトレイになされてます。それをみて、消費者はこのランクだからこの値段と判断できます。でも豪州にはありません。「和牛」は「和牛」として捉えられていますから。ファストフードのサブウェイのハンバーガーでも、高級料理店で食べるにしても、和牛は同じ和牛と思われています。だからそこを区別化する必要があります。

また和牛生産についていえば、海外に精液、生体のメス牛、受精卵持ち出されて、みんなが飛びついたのは「遺伝子」でした。日本の肥育技術をきちんと指導していいものを作るというところまではいかなかったのです。当時は、和牛を掛け合わせれば、儲かるんだろう的な商売になった節があります。今は和牛を掛け合せても儲からないが、和牛の牛肉は儲かります。良質な和牛の牛肉を作るにはどうすればいいかと考えれば、交雑種よりもフルブラッド、大型よりも小規模できちんとした肥育管理、と風潮が変わってくると思います。本当にいいものを作るという元々のコンセプトが復活してくるはずです。そこをまずは、豪州人に理解してもらいたいですね。

まだ日本の和牛が一番で、日本から新しい血統が来ないと、豪州の和牛生産がだめになっていくとか、日本から何かを手に入れたいという風潮もありますが、日本も初めから優れた血統を持っていたわけではなくて、50~60年かけて選抜淘汰されて今のものができたわけで、豪州にそれができるだけのシステムがあれば、50年もかからないでしょう。生産頭数も多く、品種改良も早いためです。

豪州に来ている和牛の血統にはいいものもあれば、悪いものもあります。でも豪州にあるものだから日本のような品質のものができないということはないと思っています。逆にいえば、豪州にあるもので、今後世界を代表するような和牛ができるかもしれません。

──日本政府は今後、海外の和牛に対してどのような対策を取っていくべきでしょうか

海外には「和牛」の定義がありません。ただ、良質な和牛を生産している生産者もいるので、ひとくくりに「海外産」としてしまうともったいないように感じます。

日本は現在、海外の和牛にどうアプローチしていくかが問われていると思います。日本政府としては、なんとかしたいけれども、なんともできないのが現状でしょう。豪州や米国で血統登録されているのをまるっきり無視するのか、それとも一歩踏み込むべきか。私は、ひも付きが取れている状態で、きちんと血統登録がされている牛を日本政府として「和牛」と認めたらいいと考えています。そうすることで海外産の和牛も、一度証明が取れているものに関しては、和牛として販売できるようにしたらいいのです。

なぜかというと、交雑種が主かもしれませんが、中国では一切登録されていない「和牛」が無数にいます。3万頭くらいの規模のところもあります。そういうところで、豪州の和牛の遺伝子が利用されていたりします。このような行為が無差別に行われていくと、本当に「和牛」が何なのか分からなくなってきます。そうなる前に、日本がイニシアチブをとって管理すべきです。

──日本政府は率先して海外の和牛管理を行っていくべきだと
そうです。そうしないと、後継者が少なくなってきている日本ではいずれ、「昔、和牛という種の牛がいた」ということになりかねません。そうなる前に、日本の和牛の品種改良をし、安全でおいしい牛肉を日本人のために作るのであれば、車と同じで海外での生産を視野に入れた方がいいはずです。

今日本国内では稲わらや放射能、後継者の問題もあって生産が難しい状況です。その中で国産にこだわる必要があるのでしょうか。日本の農家の収入を守ることが大前提だったら、日本の技術をもっとグローバルなマーケットに持ち出して、それをマーケットとして組み込んでいった方がいいと思います。

和牛は、日本産じゃなくても、豪州産でも米国産でもいいのです。ただ、少なくとも和牛として管理されているに限った方がいいでしょう。「肥育技術が違うから品質が全然違う」というのは当然でしょうから、日本がその肥育技術を海外にきちんとした形で指導をして、基準に見合うものを入れればいいと思っています。

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