500号記念集中連載 オーストラリア酪農業、改革のゆくえ 「最終回 外資席巻」

行動規範導入の面ではやり玉に挙がったオーストラリアの酪農加工業界だが、規制緩和や生乳生産量の減少などで経営環境は悪化、業界再編が進行した。

1990/91年度のオーストラリアの生乳生産量は約115億リットルを誇り、90年代の輸出市場でのシェアも16%程度だった。だが、その後、生産量は減少を続け、19/20年度の牛乳生産量は87億7500万リットルで、ほぼ25年来の最低水準にまで落ち込んだ。世界市場を見ると、乳製品貿易量は2018年までの6年間で250万トン(21%)増加した一方で、同時期のオーストラリアの輸出増加量は、わずか2万2364トン(3%)にとどまった。ほかの酪農国にシェアを奪われ続け、18年のオーストラリアの輸出市場シェアはわずか6%にまで落ち込んだ。

■存在感の欠乏

2019年に発表された酪農業界の構造改革を目指す取り組み「オーストラリアン・デアリー・プラン」は、同国の酪農を弱体化させた一因に、国際的な存在感のある加工会社が存在しないことを指摘した。2000年の自由化の後、干ばつで淘汰されたオーストラリアの加工業界は、小規模のメーカーが大手に集約され、その大手が海外の大手加工会社に買収されるという流れができた。

世界の大手は当時、主にアジアからの新興需要を取り込むべく生産量の確保を目指したが、ニュージーランド(NZ)はフォンテラが市場を独占し、欧州も参入機会が限られる状況だった。業界団体デアリー・オーストラリアによると、06年当時の輸出シェアは、NZ(32%)と欧州連合(30%)、オーストラリア(12%)、米国(6%)で8割を占めた。輸出能力のある国はこの4カ国に限定されたことから、海外大手はオーストラリアに注目した。当時の国内大手1位ナショナル・フーズと2位デアリー・ファーマーズが合併するなど、業界が大きく揺れていたことが背景だ。

■国内協同組合は風前の灯火

オーストラリアでは、かつてはVIC州の協同組合マレー・ゴールバーン(MG)が1社で世界の乳製品市場の約5%のシェアを占めるなど世界でも存在感を見せていた。だがMGはカナダのサプートに買収され、その他NZのフォンテラや日本のキリン、中国の蒙牛乳業などがオーストラリア市場に進出し、国内協同組合は風前の灯火となった。干ばつにより生産が減った生乳を、加工会社が奪い合う図式となり、体力に勝る外資大手がより有利になったという形だ。

地域酪農家による協同組合から外資系企業に加工業の主体が移ったことで、経営判断に海外の株主や親会社の意向を重視する体制が、オーストラリアの酪農業界の成長のベクトルと必ずしも一致しないということが問題となりつつある。現在はキリンからライオン・デアリー・ドリンクスを買収したベガ・チーズが地場加工会社として気を吐く存在となっている。(了)

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