第1回 豪州で日本人が納豆の本格生産 冷凍にない本来の味を追及

栄養バランスに優れた食品「スーパーフード」は世界的に注目を集めている。日本が誇るスーパーフードの納豆はオーストラリアでも販売されているが、冷凍輸入ばかりだった。そこで「本来のおいしさ」を求め、シドニーで納豆づくりを始めたのがダイズ・ナットウ(Dai’s Natto)の岩瀬大輔さん。オーストラリアであえて納豆を作る、その熱い思いを聞いた。【岩田直子】

納豆釜を前にダイズ・ナットウについて語る岩瀬大輔さん

「納豆とごはんがあれば幸せ」と、幼少の頃から納豆が好物だった岩瀬さん。2009年に語学留学で来豪し、そのままシドニーで就職した。そこで当地の冷凍納豆に物足りなさを感じ、独自生産を決心した。納豆に関する日本語論文を参考に研究を重ね、今年5月から販売を開始した。

材料はクイーンズランド(QLD)州産の大豆と、日本から輸入した納豆菌のみ。オーストラリアの大豆生産量は約4,120万キロで品種は少なく、粒の大きさで選別されているものはほぼない。

岩瀬さん曰く、『小粒』大豆はオーストラリアにはなく、『比較的小さい大豆』はQLD州産のものしかなかった。

この大豆の品名は「Natto soybeans」だが、この品種を購入しているのはもやし業者のみで、納豆生産用として購入したのは岩瀬さんが初めてだったという。

250ミリリットルの納豆菌で6トン分の納豆の生産が可能。納豆菌のオーストラリアへの輸入方法を突き止めるには半年を要した。

「輸入には『製造元発行の規格書(Specification sheet)』が必要でしたが、輸入の条件を満たす規格書がなかなか手に入らなかった」という。岩瀬さんが最後に行きついた納豆販売供給元を尋ねたところ、1社だけ規格書を出してくれる製造元にたどり着いた。

こうして規格書を作成してもらい、通関に申請。ようやく納豆菌を輸入できた。日本の納豆業者も輸入可能だとは思っていなかったという。

■持続性もポイント

商品名は、岩瀬さんの名前と大豆にちなんで「Dai’s Natto」とした。

生産では紙製の容器に豆を詰めた後に、納豆菌を付け、ラップをして発酵させるという、極力手を触れない製造法を用いる。容器の隙間から空気が入るが、乾燥はしすぎず、程よい塩梅で粘りが残るのがポイント。

「納豆菌が呼吸して発酵できるよう、ラップには100個程の通気口が空いています。この穴をあける道具も手作りです。機械を使った日本の作り方が適用できないからこそ、難しいところがありますが、『持続性』を考えるとこの方法が適しています」と岩瀬さんは強調する。

環境に配慮し、紙容器と生分解性のラップを使用

■ローカルもターゲットに

マーケティング面では、ターゲット顧客を3グループに分ける。まずは日本人、次に中国・韓国系のアジア人、最後はローカル。オーストラリアでもスーパーフードは人気で、ローカルにも普及するとみている。納豆は「ベジマイトと同様、食べ方を知っているとおいしく、においや粘り気は食べ方を変えるだけで抵抗感は減る」という。

「レストランで納豆料理を提供してほしいです。『店で食べたらおいしかったから納豆を家でも』という流れで、納豆愛好家が増えてほしい」と期待している。

こだわりと独自のアイデアで、オセアニア地域から新たな価値を提供する農業・食品版スタートアップを取り上げます。お楽しみに(編集部)

 

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