特別寄稿 第4回 コンテナがない! いつ元に戻るのか

直近のコンテナのスポット海上運賃では、部分的にごく緩やかな下落傾向が見られるものの、依然、非常に高い水準にあり、スペースも不足しています。では、いつごろこの状況はコロナ前の姿に戻るのでしょう。

■割れる意見

海運関係者、経営者、政府、学者の意見は一致していません。国連貿易開発会議(UNCTAD)は18日、運賃高騰が2023年まで続く想定のシナリオを示し、この場合、世界の輸入価格が10.6%上昇するとの試算を発表しましたが、他方でバイデン米大統領は23日、米政権の取り組みにより、米国サプライチェーン(調達・供給網)混乱のボトルネックが緩和されつつあると誇示しました。このように明確な答えは出ていない状況ですが、ここでは、いくつかのキーポイントをお伝えしたいと思います。

まず需要について、オーストラリア準備銀行(RBA)のロウ総裁は16日、耐久消費財の購入が一服し、今後、コト消費が再開されるにつれ需要が落ち着く、と述べました。しかしながら、その時期は定かではありません。米コロラド大学等が調査・発表しているロジスティクスマネジャー指数(LMI)等の10月期世界指標を見ると、川上企業の在庫量に比べ、川下企業の在庫量が特に少なくなっています。LMIの調査リポートでは、「特に小売業者が在庫を確保できていないことを反映している」としています。

また、データでは見えてこない実態として、企業が安全在庫を増やしているので、全体的な在庫率が高く見えても、実際には在庫にムラがあり、「肝心な特定の製品が入ってこない」といった悩みもよく聞きます。

次に船腹の供給をみると、第2回で述べたとおり、2022年の新造船竣工(しゅんこう)量は、需要を賄えるほどの量ではなく、船腹不足は継続する見込みです(なお23年は、22年の2倍以上の船腹が投入される見込みです)。

処理能力・労働力では、世界的な物流労働者のなり手不足が今後も続く見込みです。また、大きなトピックとして、主要揚地港である米国西海岸における、来年7月の労働協約更新があります。

過去の更新のタイミングでは、争議に発展し、物流に混乱を生じさせています。サプライチェーン混乱の中心地で、過酷な労働環境に対応していた港湾労働者が、相当の要求をする可能性が高く、大きな懸念になっています。

■主要発地側の状況

次に、オーストラリア向けコンテナ貨物の主な積地港としてよく話を聞く、中国、東南アジア、日本の概況を見てみましょう。

まず中国では、いまだにゼロコロナ政策を続けています。今年、世界最大級の港である深セン、寧波の港や、上海浦東の空港等において、たった1人の感染者発生で埠頭(ふとう)を閉鎖する等、大きな混乱が生じました。直近では、大連港の低温倉庫における感染者発生で大きな影響が出ています。1人の感染で世界最大級の港湾が混乱する状況では、将来を見通すことはかなり難しい状況です。

そんな中国ですが、例年、旧正月の期間中、多くの工場が稼働を停止し、コンテナの需要が減ります。このタイミングでどれだけ正常な状態に近づけられるかが、世界のコンテナ不足における最初の焦点になりそうです。

タイをはじめとする東南アジアでは、感染者数の落ち着きにより、労働者が製造や物流現場に戻り始めており、自動車生産台数等は上昇傾向で、需要回復による船腹不足が続いています。

日本でも、新型コロナ感染者は減っていますが、他国同様コンテナ不足が深刻です。日本最大のコンテナ取扱港である東京港の9月期コンテナ輸出取扱量をみると、半導体不足による減産の影響もありますが、コロナ前の19年同月比で15.8%の減少となっています。

一方の航空貨物をみると、成田空港の9月期積込量は、19年同月比で27.1%増となりました。コンテナ船の船腹が確保できず、航空輸送する「船落ち」が多く行われていることも影響しています。

各国で新型コロナや港湾の状況は異なりますが、結局のところ、中国→欧米といった主要航路の船腹不足を解消するため、世界中からコンテナ船がかき集められてしまうことから、世界的な船腹不足が生じます。輸送する貨物の発地、仕向地に加え、世界の主要航路のサプライチェーンの混乱が解消しないと、通常の状態には戻らない状況です。

次回の最終回では、オセアニアの現地企業として考えうる対策や、サプライチェーンの将来像について触れたいと思います。

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