第31回 アバンダント・プロデュースって何?

アバンダント・プロデュースのトニー・クリミンズCEO(同社提供)

昨年4月に華々しくオーストラリア証券取引所(ASX)への上場を果たした野菜の育種会社アバンダント・プロデュース(Abundant Produce)。過酷な環境下で栽培できる品種の開発で先んじており、世界市場での成長が期待されています。農業系企業には珍しく国内の投資家が殺到し、上場時には注文が公開株数を超える超過応募となりました。アバンダントはどのような会社なのか見てみましょう。【平林純子】

 

アバンダントは2011年に、シドニーを拠点に個人企業として設立され、15年に未上場企業となりました。主な事業は、キュウリやトマトなどの付加価値の高い温室野菜を中心とした、野菜品種の取得や開発、商業化です。アバンダントが他社と異なるのは、高温や貧しい土壌、少ない水などの困難な環境下でも栽培できる品種の開発を事業の軸に据えていることです。アバンダントは、現在世界に出回る野菜の種は、グローバル大手が農業大国オランダなどで、温室内の理想的な環境下で生産したものであり、オーストラリアやアジア、中東など、気候が理想的でない地域に合わせて作られたものではないと考えています。

アバンダントは、過酷な環境でも育つ品種を開発することに注力し、気候や土壌に恵まれない農家の収穫増につなげることを目指します。また、厳しい環境でも育つ品種を開発することで、温室の温度管理などに投じられるエネルギーコストを削減し、温室効果ガスの発生を削減することも視野に入れます。ASXに上場する唯一の農業IP(知的財産権)でロイヤルティー収入を得る企業です。

一例として、アバンダントは暑さに耐性のあるトマトの品種を開発しました。パキスタンで気温50度の暑さにさらされても実を付けます。インドやメキシコなどの新興市場向けに、現地の厳しい気候に耐えられる品種の開発を進めています。一部の種はすでに、国内のホームセンターチェーンや米国の種大手バーピーを通じて販売されています。

■シドニー大とタッグ

アバンダントはシドニー大学の植物育種研究所(PBI)とタッグを組み、野菜をオーストラリア原産の植物と掛け合わせ、オーストラリアの過酷な夏を経験させることで、厳しい環境でも育つ品種を開発しています。クリミンズ最高経営責任者(CEO)は、温室で甘やかされた種を作らないことがアバンダントの強みだとしています。

上場で得た資金を元に、アバンダントは育種施設を拡充させ、上場から半年間に育種スペースを4,740平方メートルとそれまでの3倍の広さに拡大します。新たな研究スタッフや機器を投入し、キュウリやトマトなどすでに開発済みの種に加え、新たな野菜を商品ラインアップに加える取り組みを加速しています。

■グローバル展開へのハードル

アバンダントの事業モデルは、野菜のIPを獲得し、種の販売に応じて流通業者からロイヤルティー収入を得ることです。同社は2月末、グローバル大手のうち1社と、近く中東と一部アジア向けに販売する契約を正式に結んだことを発表しました。現在アバンダントは種を国内で生産していますが、将来的にはグローバル大手とつながりのある企業による海外生産が行われるとしています。またアバンダントは、グローバル大手向けの供給を円滑にするため、チリでの種生産に今年着手しました。通年供給を実現するため、南米やベトナム、インド、中国でも種生産の可能性を探っています。

世界の種市場は、米モンサントとスイスのシンジェンタが約80%を握ります。このため、グローバル展開を成功させるには、グローバル大手と良好な関係を築く必要があります。

倫理的で遺伝子組み換え(GM)技術を用いない種を作るアバンダント。グローバル大手との関係を探りながら、オーストラリア重視の姿勢を貫く方針です。

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