第32回 ヒューオン・アクアカルチャーって何?

オーストラリア・タスマニア(TAS)州は、世界でも名高い養殖サケの生産地です。豊かな自然ときれいな水質が水産業に適した同地で、約30年にわたり操業を続けているのがサケ養殖・加工大手のヒューオン・アクアカルチャー(Huon Aquaculture)です。サケ生産では国内第2位ですが、養殖場の環境をめぐって昨年からライバル社との対立が続いています。【関和マリエ】

ヒューオン・アクアカルチャー創業者のピーターとフランシス・ベンダー夫妻(同社提供)

TAS州でサケの養殖産業が始まったのは1980年代半ば。養殖開始当時に創業された水産会社11社のうち今も継続しているのは4社だけで、そのうちの1社がヒューオンです。創業者のピーターとフランシス・ベンダー夫妻は元々、牛や羊の生産農家でしたが、事業の一つとして86年にサケ養殖に着手しました。同州のサケ産業成長の波に乗り、88年に水産会社としてスタートしています。

持続可能な水産業をポリシーとする家族経営をベースとした企業ですが、2014年にはオーストラリア証券取引市場(ASX)に上場を果たしました。創業時から拠点となっている同州南部ドーバーのハイダウエイ・ベイのほか、現在は西部のマッコーリー・ハーバーにも養殖場を拡大。北部のパラマタクリークにはサケのスモーク加工などを行う自社工場を構え、自社で養殖する年間約1万7,000トンのサケを加工し国内外に出荷しています。

16年の年間売上高は2億3,374万豪ドル(1豪ドル=約87円)、純利益は343万豪ドルで、売上の内訳比率は卸が65%、輸出が25%、小売りが10%となっています。過去1年でみると、輸出の割合が10%増加し、卸が10%減少しているようです。

■養殖による海洋汚染を告発

TAS州西岸のマッコーリー・ハーバーでは、業界1位のタサル、2位のヒューオン、3位のペチューナ・シーフーズと、現在3社のサケ養殖業者が操業しています。

ベンダー氏は昨年11月、公共放送ABCの報道番組「フォー・コーナーズ」で、同湾の過密養殖の事実を告発。サケに多大なストレスがかかっていることや、環境汚染の問題を指摘しました。環境保護のために州政府は、養殖するサケの数を削減する必要がある、というのが同氏の主張です。

しかし、州の環境当局である環境保護局(EPA)は同州のサケ養殖業を適切に監視していると反論し、マッコーリー・ハーバーのサケ養殖認可数を直ちに変更することはないとコメントしています。

ところが今年1月、EPAは最大規模の養殖を行うタサルに対し、マッコーリー・ハーバーのサケ養殖規模を、今年2月末までに2万トンから1万4,000トンに減らすよう命じていたことが分かりました。海洋汚染の悪化が理由とのことです。

■環境保護局を提訴

今年2月、ヒューオンは1万4,000トンでも環境負荷が大きすぎるとして、EPAを相手取り、同州がサケの過密養殖を黙認していると州最高裁判所に訴えを起こします。これに対し、タサルは法廷でEPA側に立ち「ヒューオンの主張は誤り」と、業界トップ2社は真っ向から対立。

タサルは減産を免れるべく、マッコーリー・ハーバーの自社の養殖網に大規模な汚染除去システムを取り付ける汚染軽減方法を提案し、EPAはシステムの試験導入期間を設けました。

6月末に汚染除去システムの本格利用をEPAが承認し、結果的にタサルは1ヘクタール当たり28トンの養殖を許可されることに。これに対し、ヒューオンとペチューナが許可されている量は1ヘクタールあたり13トン以下です。ヒューオンは「システム利用の承認プロセスは不透明で公平性を欠いていた」とEPAを非難しており、今後も対立が続くことが予想されます。

TAS州のサケ養殖市場規模は7億豪ドル以上。州政府は2030年までにこれを10億豪ドルに引き上げる目標を掲げています。環境に配慮した水産業を標榜するヒューオンが、TASの自然保護と企業の成長をいかにして両立するか、今後も注目が集まりそうです。

 

会社概要

【ヒューオン・アクアカルチャー】

本拠     :タスマニア・ドーバー

主要人物          :フランシス・ベンダー最高経営責任者

主要事業          :サケ養殖・加工

売上高  :2億3,374万豪ドル(2016年)

純利益  :343万豪ドル(同)

従業員数          :524人

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