第1回 NZの人工林面積と所有形態は?

この度はWealthにてニュージーランド(NZ)の林業を紹介する連載の機会を頂きました。よろしくお付き合いのほどお願い申し上げます。

NZ林業の特徴として、皆さんはどのようなことばを思いつくでしょうか。「ラジアータパイン」、「人工林」、「大規模」、「集約的施業」、「皆伐・再造林」、「民営化」、「丸太輸出」などかも知れません。本連載では、現地で携わる林産業・木材コンサルタントの立場からNZ林業・木材産業を俯瞰しつつ、その現在地や課題を考えていきたいと思います。

出所:NZmokuzai.com

■背景・人工林面積

雄大な自然を有し、一般に「クリーン」「グリーン」なイメージで親しまれるNZですが、その国土面積に占める森林面積の割合35%は、森林資源国・林産業先進国として決して高い数字ではありません。それは、日本国土の約3分の2が森林であることと比べても明らかです。

先住民入植当時、NZの国土の8割以上は森林でしたが、その後の先住民による原生林開拓や19世紀以降のヨーロッパ系移民による農地・牧草地への土地利用転換によって、森林面積は急速に減少していきました。貴重な森林資源の乱伐を憂慮したNZ政府は、20世紀初頭から本格的に森林行政を開始します。天然林については伐採を厳しく規制し、国立公園や保全林の指定を進めるなどして保護。一方では、失われた木材資源の再構築と雇用対策の一環として、大規模な植林事業を展開していきました。

以降約100年が経過し、現在の植林地面積は171万ヘクタール。これは国土の6%に当たります。樹種別ではその90%を、米カリフォルニア州原産のラジアータパインが占めます。森林行政指導や市場拡大によって順調に増加し続けていった人工林面積ですが、21世紀に入ってからは一部でより収益性の高い牧草地や住宅地へ用途転換されていったこともあり、ここ十数年は微減から横ばい傾向にあります(グラフ参照)。

■所有形態

1980年代末、多額の負債を抱えていたNZ政府は、財政再建のために多くの国有事業の国際競売を実施しました。その中には国有人工林の立木伐採権売却も含まれており、それまで政府によって運営管理されていた多くの人工林が民間企業の手に渡りました。その後1990年代から2000年代を通じ、国・公有林の民営化は加速度的に進行していきました。その間、主に北米ファンド系の外国資本参入も相次ぎ、2017年にはNZ人工林の96%が民間企業の運営管理下となっています。

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投稿者プロフィール

松木法生
ニュージーランド在住の林産業・木材コンサルタント。現地林産企業やコンサルティング・ファーム勤務を経て独立、現在はフリーランスとして各種ビジネス・コンサルティングやエージェント業務に携わる。
ウェブサイト NZmokuzai.com
メールアドレスask@nzmokuzai.com