第37回 ワトル・ヘルス・オーストラリアって何?

オーストラリア産の乳児用粉ミルクは、信頼性が高く国内外で人気があります。最近では特に中国人による買い占めが話題となり、地場スーパーマーケットでは品薄状態が続いている状況です。その中でも、2017年にオーストラリア証券取引所(ASX)に上場した、粉ミルクメーカーのワトル・ヘルスに焦点を当ててみましょう。【石渡由香利】

ワトル・ヘルスの共同創業者、グレニスター氏の家系は、4世代にわたり酪農業を営んできました。同氏によると、祖父母の世代から受け継いだ倫理観の高い慣行と乳牛への気配りは、ワトルの企業精神に反映されているといい、同社の商品は、国内で生産された最高品質の原料を使用した「100%オーストラリア産」にこだわっているといいます。

デロイトのリポートによると、同社の株価は17年にIPO(新規株式公開)を実施して以降、815%上昇。主要の粉ミルク事業だけでなく、離乳食事業や子供向けスキンケアブランドの「リトル・イノセンツ(Little Innoscents)」の成長が堅調であることから、2018/19年度後半(19年1〜6月)の業績も大きな伸びが期待できるとされています。

■オーガニック製品に注力

同社はこのほど、オーガニックの粉ミルク新ブランド「Uganic」を国内外の小売店で4月から販売開始すると発表しました。第三者の加工業者からオーガニックの栄養粉末を確保するため、340万豪ドル(約2億7,016万円)を投入したといいます。同社は、国内での広範囲な流通を実現するため、現在主要小売業者と最終交渉中だとしています。

また同社は昨年4月、ビクトリア(VIC)州の乳業協同組合オーガニック・デアリーファーマーズ・オーストラリアとの合弁(JV)事業として6,300万豪ドルを投入し、コライオ・ベイ・デアリー・グループを設立。オーストラリアで初のオーガニック乳製品の生産に特化した噴霧乾燥施設の建設に着手しました。建設は今年末に完了する予定だといい、2020年第1四半期(1〜3月)には同施設での商品の生産を開始する見込みです。

■原料から生産まで垂直統合

ワトル・ヘルスの事業拡張計画は、原料生産の範囲にとどまりません。同社は今年2月、乳製品製造企業ブレンド・アンド・パック(B&P)の株式を、4,600万豪ドルを投じて追加で46%買い増すと発表。取引が完了すれば、合計で51%の株式を保有することになり、主要株主となることが分かりました。オーガニック製品における流通経路全体にわたり存在感を高める狙いだといいます。カラサヴィディス最高経営責任者(CEO)は「今回の買収により、農家から消費者までのバリューチェーン全体を通して影響力を持つことができるようになる」と話しています。

また、同社は中国市場を売上成長の鍵ととらえており、昨年、オーストラリアのグラスフェッド(牧草飼育)の乳牛から生産された粉ミルクを中国で販売する承認を得ました。同CEOは、「B&Pの株保有率を上げることで、中国のような主要海外市場での販売・流通の強化にもつながる」と話しています。

コライオ・ベイの設立、そしてB&Pの買収計画により、ワトル・ヘルスはオーガニック乳製品業界で初めて、原材料生産から製品販売までの過程を垂直統合した企業に生まれ変わろうとしています。今後は、栄養価の高いオーガニック乳製品の生産に集中するとしており、国内のオーガニックブームの波に乗り躍進を遂げるのか、これからの動きに注目です。

【ワトル・ヘルス・オーストラリア】
本拠: メルボルン(VIC州)
主要人物: ラザラス・カラサヴィディスCEO
主要事業:乳児用粉ミルク製造
売上高:157万豪ドル(2018年度通期)
純損失:1,980万豪ドル(同)

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