第38回 シンプロット・オーストラリアって何?

オーストラリアのスーパーマーケットでは、スイートコーンや豆類、ツナ、サーモンなどさまざまな食品の缶詰が販売されています。また、冷凍食品売り場には、ミックスベジタブルの冷凍パックも見かけます。どのスーパーでも共通するブランドが売られていることも多いですが、中でも多数のブランドを有する最大手加工食品サプライヤー、シンプロット・オーストラリアを紹介します。【湖城修一】

同社は、1995年に米国のJ.R.シンプロットのオーストラリア法人として設立され、「Edgell」「ジョン・ウエスト」「バーズ・アイ」「Leggo’s」「Chiko」など、多数のブランドを展開しています。米国ではポテト栽培事業の会社でしたが、これらのブランドによるオーストラリアでの事業は、ポテト・野菜事業が全体の39%となるほか、◇シーフード:30%◇食肉事業:17%◇トマトソースなどの事業:9%――などとバランスよく構成されています。自社ブランド製品の他にも、主要スーパーのブランドでOEM(相手先ブランドによる生産)や、マクドナルドなどの主要ファストフードチェーンへフライドポテト用のじゃがいもの供給も行っています。

2017/18年度の売上高は前年度比5.6%増となり、純利益は6,230万豪ドル(約50億円)と同10倍と大きく拡大しました。

同社はこの好業績の要因を、「販売量の拡大と、継続的なコスト削減」のためとしています。

同社の加工工場は、ニューサウスウェールズ(NSW)州に1カ所、ビクトリア(VIC)州に2カ所、タスマニア(TAS)州に2カ所展開しています。TAS州の2工場が主力の野菜の加工を担当しています。

今でこそ食品加工業界の一翼を担う同社ですが、ここまでの道のりは平たんではありませんでした。

■国内産の加工用野菜がなくなる?

2000年初頭、TAS州の工場で加工する野菜はほとんどが中国産でした。当時、賃金水準や環境規制などで、中国とオーストラリアの野菜生産者は、競争力に大きな違いがありました。競合が次々と撤退する中、同社も工場を閉鎖するといううわさがささやかれ、国内産の加工農産物がゼロになるという可能性も指摘されました。10年には新労使関係法が同社のコストを急騰させ、政府に工場閉鎖の検討に入ることを伝えています。

12年に、大手スーパーのコールズがプライベートブランド(PB)の冷凍野菜をすべてオーストラリア国内で調達すると決め、国内に唯一工場を持っていた同社が加工を行うことになりました。

そして翌13年には、競合のウールワースが、PB「セレクト」の冷凍野菜の仕入れに関して、同社と供給契約を結びました。新たな受注により、閉鎖の危機に直面していた工場は操業を継続するだけでなく、5,200万豪ドルを投じ、毎年25%ずつ加工能力を向上させることを決めました。

15年には、経営陣と従業員がそれぞれ歩み寄り、賃上げ交渉で合意を見ることができました。

■苦境を脱し、攻めの姿勢へ

設立から20年以上たった同社は、オーストラリアで生産する利点を、高品質作物の生産に理想的な昼夜の寒暖差があることのほか、◇農業界の規制が整っていること◇昔ながらの自然志向の栽培方法◇社内で長期にわたる情報共有ができていること――などを挙げています。実際に同社の工場では親子の作業員が働き、2世代にわたって同社に作物を納入する契約農家も多数存在します。

一方で、今年4月には、5,130万豪ドルを投じ、TAS州のポテト工場を増強することを決めました。今後10年間で生産量を倍増させ、地域経済成長にも1億6,400万豪ドルを寄与する計画です。年間30万トンのじゃがいもの生産を見込むこの拡張で、同社は攻めの姿勢に入ったと言っても良さそうです。

【シンプロット・オーストラリア】
本拠:VIC州メントーン
主要人物:グラハム・ダグデイル社長
主要事業:缶詰や冷凍食品など食品加工業
売上高:14億7,600豪ドル(2017 / 18年度)
税引き後純利益:6,230万豪ドル(同)

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