第16回 都市での食料生産

都市はさまざまなものを栄養補給され成り立っている、いわば生物のようだ。そのため少しでも栄養補給が滞るとたちまち混乱に陥る。特に食物は人々にとって必須のものだ。

荒廃する社会での都市農業の貢献という観点から、米国のオハイオ州大学のグレウォル教授が論文「都市は食物を自給できるか」を書いている。研究の対象都市は、米国北部にある脱工業化都市のクリーブランド。人口減少が激しいクリーブランドは、差し押さえ住宅が多いため空き地が多いことのほか、低所得層では健康的な食材の入手が困難な上、飢え、肥満などが問題となっている。グレウォル教授は空き地を利用した農業でどれほど食料需要を満たすことができるかを3つのシナリオで検討している。

■シナリオ1
空き地の80%を利用した場合に生産できる食物:新鮮な野菜と果実:22~48%、鶏肉と卵:25%、ハチミツ:100%

■シナリオ2
空き地の80%+住宅地9%を利用した場合に生産できる食物:新鮮な野菜と果実:31~68%、鶏肉と卵:94%、ハチミツ:100%

■シナリオ3
シナリオ2+工業・商業施設の屋上62%を利用した場合に生産できる食物:新鮮な野菜と果実:46~100%、鶏肉と卵:94%、ハチミツ:100%

この3つのシナリオでは、食物・飲料自給率は重量ベースで4.2~17.7%、出費ベースで1.8~7.3%に上昇することができるという。現在、クリーブランドの食物・飲料自給率は出費ベースで0.1%だ。グレウォル教授は都市農業が健康や環境、地域経済、地域社会へ与えるメリットは都市農業を行うコストよりも重要であると締めくくっている。

筆者の個人的な印象としては、都市の大きさや人口にもよるが、やはり都市というのは、現状では完全自給は難しいものの、農業はある程度の“自立”を都市に与えてくれるものだ。都市で生産と消費サイクルが確立されれば、究極の“地産地消”といえる。

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