第23回 蚊とDDT

「DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)」といえば、レイチェル・カーソンが米国で農業や環境における危険性を指摘したことがきっかけとなり、多くの国で使用が禁止・制限された殺虫剤だ。戦後の日本でも、シラミなどを予防するために頭にふりかけたりしていた。

ただ、アフリカなどでは蚊を媒介して発生するマラリアやデング熱を防ぐために、DDTがいまだに使用されている。2006年には世界保健機関(WHO)がほかに特効薬がないとして、マラリア対策として室内でのDDT散布を推奨することを発表している。

筆者は以前大学で、「マラリア対策で室内でのDDTの使用を許可すべきかどうか」というディベートをしたことがある。筆者は「DDT=環境汚染」という頭で、殺虫剤を人体の近くで散布するとは……と考えていたのだが、ディベートの優勢はあれよあれよと使用を許可する方向に流れていったことを覚えている。

■デング熱を防ぐ細菌

さて、デング熱をみてみると、豪州のケアンズなどでも発生している。ただ、近年の研究により近い将来、違った形でのデング熱発生を防ぐ方法が確立するかもしれない。

メルボルンにあるモナッシュ大学率いるグループは09年に、蚊やハエに生息する共生細菌「ボルバキア(Wolbachia)」が蚊からヒトへのデングウイルスの媒介を防ぐことを明らかにした。

その後モナッシュ大のオニール教授は、クイーンズランド州のケアンズ周辺で庭先に、ショウジョウバエ由来の同細菌に感染した蚊を放出する実験を実施。11年初期に約30万匹のオスとメスを放した。その結果、同細菌に感染する蚊が増加し、ほぼすべてが同細菌を保有する蚊に置き換わったことが確認された。

今後は、12/13年度の雨季(12~2月)にケアンズでさらなる防御機能を持つ同細菌を摂取した蚊の放出実験を予定している。また「同細菌に感染している蚊は、ヒトのデング熱感染率の低減につながるのか」という疑問については、さらにデング熱が発生しているベトナムとブラジル、インドネシアでも現場で実験が行われるようだ。

さて、DDTを使用すべきか否かで焦点になっているマラリア感染を減少できる訳ではないが、蚊の内部に共生する細菌によってデングウイルスの媒介を防げるとはなんとも興味深い上に期待感も大きい。

「DDTを使用することが家への蚊の侵入を防ぐ手段なんだ」といった議論が、過去の話になる未来も近いように感じる。

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