第24回 都市拡大か農業維持か

豪州で都市活動や農業活動を左右するものは何か。その重要な一つは水資源だろう。現在、マレー・ダーリング川流域の水資源政策で改正草案が出されているが、水を巡る問題は政治とも大いに関わっているのがうかがえる。

今回は、第2の都市メルボルンの例を見てみよう。「北南パイプライン(North-South Pipeline)」事業は、マレー・ゴールバーン流域の送水網とメルボルンの送水網をリンクさせ、メルボルンに水を供給することを意図した事業だった。

同事業ではかんがい用水として確保されていた2,250億リットルのうち、年間750億リットルをメルボルンに送水する計画を立てていた。

ただ、北部の生産者などを中心とした団体「送水管に栓を(Plug the pipe)」やビクトリア(VIC)州生産者連盟(VFF)を始め、野党であった自由党、国民党、環境政党グリーンズ(緑の党)も反対。「Plug the pipe」は同事業を推進していたブランビー前首相の口に栓を付けたポスターを展開していた。

前労働党政権が7億5,000万豪ドル(約580億円)を投じた同事業は、2011年11月に現在のベイリューVIC首相が事実上の廃止を発表した。北から南へ送水が行われるのは、メルボルンで生活が脅かされるくらいに乾燥した場合か、山火事消火での利用に限られる。
送水管が接続された保水地「シュガーロフ・リザーバー」には、最大容量近くに達して一時停止される2010年9月までに270億リットルが送水された。

ここ数年は降雨があるものの、干ばつ時には「水」は生命線。同パイプライン事業も、海水淡水化や生活雑俳水のリサイクルなどいくつもあった選択肢の一つだったようだ。VIC州は主な産業として農業を押しており、同事業は「都市か農業か」という葛藤の狭間に位置していたに違いない。

さてマレー・ダーリング川流域には、主要都市がキャンベラくらいしかないが、もしシドニーやメルボルンも同流域内に位置していたら、さらに水の利権を巡る議論が泥沼化していたはずだ。

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