第30回 豪州で屋上菜園は普及するか

コンクリート張りの都市化が進んだ街中で、農業をするのは難しい。まずその用地に最適な場所として屋上が注目される。「屋上緑化」というのは緑で覆うだけだが、「屋上菜園」となると、緑化の機能を果たしつつ、食料生産の機能も持ち合わせる。 食料自給率が低く、国内で食料生産量を高める必要性が日本にはある。そのため、都市の中で食料生産が行われるのも自然な流れだろう。日本の自給率が低いため、少しでも貢献するために、家庭菜園を始めたという人々もいるほどだ。 だが、日本人はその必要性に加え、遠目から日本の屋上菜園の広がりを見ると、日本人は食料を自分の手で育てることに何かしらの懐かしさを感じているように思う。豪州人に東京・六本木ヒルズの屋上で行われているコメ生産の話をしたことがある。その写真を見せたときに、彼女は「まさにこれはトトロの里山につながる“Satoyama on the roof”だね」とコメントした。 日本人にとって里山とは何とも平和な雰囲気を醸し出す。だが、それは数百年前から続く何かではなく、戦後から経済成長期前の一時に強く執着している点は特記すべきことだ。 さて、豪州では都市の規模は日本の中堅都市と同じくらいで、少し車で行けば食料生産が行われている。懐かしむ昔というのも、そうはないだろう。つまり日本の屋上菜園が広まった背景にある「必要性」や「懐かしさ」というものは、豪州では屋上菜園拡大のけん引力にはならないはずだ。 以前大学で「わざわざエネルギーを使って水や土をビルの上まで持っていき、屋上菜園をやるのは意味があるのか」と教授に指摘されたことがある。その言葉は、豪州では屋上菜園の意味が薄いことを如実に表している。 北半球では屋上菜園の研究や実践が数多く行われてきている。だが、ここ豪州で環境保護や緑地の創造、食料生産などを理由に、屋上菜園を推薦することは現段階では難しいのだろう。

関連記事

アーカイブ

ウェルスのトリビア

新型コロナの巣ごもり需要で業績良好なファストフード業界ですが、今後4年間で店舗数を現在の倍に増やすという、鼻息の荒いチェーンはどのチェーンでしょうか?(答えは記事中に)

ページ上部へ戻る