第34回 資源開発と環境学

鉱物資源大国である豪州では、環境学と資源開発は密接な関わりがある。国土が広いといえど、街にほど近いところでも鉱山があったり、農業地帯の真ん中に露天掘りの鉱山があったりする。そうしたところでは特に近隣への影響を最小限に抑えることが必須だ。

資源開発中または終了後の一般的な環境への懸念には、◆土壌浸食◆選鉱くずの生成◆土壌に含まれる塩分やナトリウムの管理◆地表水・地下水の流動と品質◆有害物質による地表水・地下水の汚染◆水漏れや浸水◆植生や野生動物の保護◆地形の安定性─などがある。環境を復元させることで重要視されているのは、管理やインプットがいらない自立的で回復力のある生態系を形成することだ。

鉱山の現場ごとに対処は異なるが、まずは地形の安定化が必要になる。採掘した土砂を積み上げた場合、側面の土壌が浸食しやすい。そこでは下部に石を積んだり、植生を生やしたりして土壌浸食を防ぐ。また露天掘りで採掘した土壌は、層によって土質が異なるため、埋め戻す際には順序良く戻す配慮が必要となる。

また空気や水に触れると硫酸が生成される選鉱くずの山には、根の浅い草しか生やすことができない。樹木を植えると、下に固定されている有害物質にまで根がたどり着き、生態系に影響を与える可能性があるようだ。また同地での家畜の放牧はできない。

筆者は以前、キャンベラの南東にある歴史的な鉱山街キャプテンズ・フラットを訪れたことがある。そこには、1962年に閉山した鉱山跡地や貨車の線路が残っており、観光地にもなっている。ただ、地形的には、山盛りになった土砂の上から街を見下ろし、街より40メートル高い場所に鉱滓ダムが位置する。過去にはダムの崩壊や洪水により、貯めてあった選鉱くずに含まれる有害物資が流れ出し、川下を汚染したという記録もある。

資源開発のスパンは数年から数十年だろうが、生産が終了してからも有害な土砂や水は近隣に流れ出ないために固定されており、コミュニティは資源の“産物”と半永久的に隣り合わせといえる。生態系の復元やコミュニティの衛生こそが、資源開発現場における環境学の使命と思う。

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