第37回 貧困を削減する貿易とは

途上国の貧困に対し、自由貿易ではその対応をチャリティにまかす。反対に、フェアトレード(FT)は貿易を通じて、生産者が貧困から抜け出すシステムと話すニューサウスウェールズ大学のシェリル・カーノット准教授に、FTの仕組みについて話を聞いた。

自由貿易は、大国同士の大きいコモディティが対象で、価格変動も激しい。一方、FTは小規模な生産者に対し、最低価格とプレミアム価格が生産者に保証している。FTに携わる末端の生産者は協同組合である必要があり、協同組合は平等に賃金が支払われるほか、賃金に男女差があってはならない。プレミアムは90%の場合、地域のクリニックや学校建設に使用されるようだ。カーノット准教授は収益が平等に行きわたる協同組合が一番民主主義であると主張する。

FTに携わるためには、原料がFTの認証を受けていることが条件だ。途上国に工場を造ったからといって、それがFTになる訳ではない。需要の高いコーヒーや紅茶、チョコレートでFTは成功しやすいが、民芸品は需要を開拓していく必要がある。

オーストラリアとニュージーランド(NZ)は世界のさまざまな地域からFT商品を輸入しているが、地理的に近い太平洋諸国からの輸入を優先しているという。両国間ではNZの方がFTが浸透している。背景には、人口が少なく、オックスファムやトレードエイドなどの団体が長年FTを行っていることがある。また地理的にバナナやコーヒーが生産できず、輸入に頼っているためだ。

■CSRとしてのFT

最近では企業でも企業の社会的責任(CSR)としても注目を集め始めた。企業ができるFTとは?まずは、社内でFTの食品を購入すること。すでに取り入れた企業からはとても良いCSRと認識されているようだ。また英国では大手のスーパーや食品会社が事業の一環としてFTを行っている。海外から食糧を調達する日系企業もこうした取り組みができるという。これが消費者に対して一番強い発信力となる。

FTは今後どうなっていくのか。カーノット准教授は、FTが主流になることはないとの見方を示している。世界貿易機関(WTO)が大国に有利な規制を設け、自由貿易を押している間は現実的に難しいと指摘する。ただ、FTが直接的に政府の政策に影響を与えることは少ないが、消費者の意識を変えることはできる。FT市場が拡大していくことで、大手企業が参入し始めている。大手ではスターバックスやネスレ、キャドバリーなど。FTが自由貿易の大手プレイヤーの行動を徐々に変えている。

また、チャリティでは集めたお金を一時的に生産者に渡すことはできる。だが、FTでは消費者がFT認証のコーヒーを買うという行為で、生産者に仕事を与え、財政的に自立して貧困から抜け出す手助けができる。そこに、FTの魅力がある。

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