第38回 自治体の都市農業に対する取り組み

2050年までに人口が3,500万人に増加すると予想されているオーストラリアが、自国の食糧安全保障について検討し始めている。農業大国でありながら、人口が都市に集中していることは世界でも有数だが、肥沃な農地は人口の多い地域に広がっていることが多く、都市化と共に失われつつあるのが現状だ。

オーストラリアの自治体は、都市部での農業に対してどのような取り組みを行っているのだろうか。主要都市にある自治体についての研究によると、都市農業を細分化して見た場合、業態によってかなり違っていることが分かる。 例えば、養鶏では各自治体が近所迷惑にならないように規制を行っている。規制に沿うのは都市では少数派の大きな住宅ともいえる。一方、養蜂は受粉を行うことで都市農業の重要な役割を担っているにもかかわらず、地方自治体の関心は薄い。

■街路樹を果樹に

都市農業の土地利用では、市民農園である「コミュニティガーデン」のみが認識されている。コミュニティガーデンに関する政策の6割以上がシドニーの地方自治体で見受けられるという。自宅の庭が狭い地域では、市民が集まれる農園が重宝されるようだ。コミュニティガーデンは非営利で、多くの場合が生産した農産物の販売が禁止されている。

堆肥作りは、都市農業の一部であるが、地方自治体としては都市農業の戦略と捉えるよりも、ゴミ削減としての価値を認識している。地方自治体では堆肥作りやミミズ養殖のワークショップが開催されていることが多い。また赤と黄色のゴミ箱に加え、ふたが緑の堆肥用のゴミ箱を導入している地方自治体もあり、これらは堆肥センターに集められる。

また道沿いの木を果樹にすることで、都市での食料生産を大いに飛躍させることができると考えられている。ただ、大半の地方自治体が道路の緑化計画を作成している中、食べられる品種の果樹植え付け、生育を促している地方自治体はないようだ。 筆者は各自治体が食料生産の基盤を整え、市民に方向性を示すことも重要だと考えている。

都市が肥大化する前の段階から、自治体の政策で都市農業の重要性を発信していく。人口が年々増加しているオーストラリアの都市部は、将来的な食料需要の増加に対し今から対策を練ることができるはずだ。

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