第44回 廃棄食材を減らすプロ

廃棄される食材を削減しようという試みは、世界中に広がっている。国連環境計画(UNEP)や国際連合食糧農業機関(FAO)などは今年1月、世界の食糧生産量の3分の1に当たる年間13億トンの食材ロス・廃棄を削減するグローバルキャンペーンを開始している。

捨てられる食品。一方で食事をまともに取れない人がいる。これらをつなぐために奮闘している慈善団体がオーストラリアにある。国連などの同キャンペーンの公式パートナーにもなっている非営利団体「オズハーベスト(OzHarvest)」だ。「家族だけでなく、世界の役に立ちたかった」と語る同団体の創立者ローニィ・カーンさんに話を聞いた。

イベント業界で働いていた経験を持つカーンさんは、イベント後に常に食材の廃棄を目の当たりにしてきた。持って帰れる時は、余りの食材を持って帰ったりしていたという。オズハーベスト創立に関しては、「誰でも食材を無駄にしてはいけないことを知っている。だから、人々を教育しなくても、多くの賛同を得ることができた」とカーンさんは言う。

オーストラリアには食材を届ける慈善団体はほかにもあるが、オズハーベストの最大の特徴は、調理済み食品を毎日、スーパーやカフェ、レストランから回収し、必要な団体へ配送することだ。

オズハーベストは企業などから補助金を得る一方、食材提供元も提供先もお金を一切払う必要はない。どちらも登録された企業や団体であることが必須で、個人からの食品寄贈、個人への配布は行っていない。カーンさん曰く、「提供したものを24時間以内に消費することが義務付けており、個人への配布では目が届かないため」。

■配送先決定の力量

ホームレスや老人介護などを行う慈善団体は、財政基盤が軟弱な団体もある。オズハーベストによる食材の提供で、より多くの食事を提供できるようになった団体も多い。こうした団体からは事前にどのような食糧が必要かを聞くが、配送は「最大限要望に答えるよう努力するが、余剰の食糧があったときだけ」だ。そのため、週1回配送する団体もあれば、もっと頻繁に配送する場所もある。食糧の提供された量をみて、どこへ配送すれば一番良いのかを決めるのは難しい時もあるという。

オズハーベストは創立9年。これまでは食材の輸送が主だったが、「食材廃棄の嫌いな」シェフとのコラボイベントや食材を無駄にしないレシピ本の発行など、最近では「国を豊かにする」視点も取り入れた。

今後はビクトリア州へも進出する予定で、西オーストラリア州からも声がかかっているという。海外での事業展開は?との質問に対しては、「オーストラリアで根付かせたい。海外の人が我々のビジネスモデルを取り入れたいのであれば、ノウハウを提供したい」と述べている。「廃棄される食材はゼロにはならない」(カーンさん)が、食材を無駄にしない波はオーストラリア各地に広がりつつある。

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