第50回 農産物の直売

農家が農産物を消費者に直接販売する傾向が世界的に広まっている。直売には、露店や道端、ファーマーズマーケット、野菜・果物狩り、オンライン販売などがある。こうした広まりには、消費者が安全性や健康さ、安さ、味の良さなどを求めることのほか、農家や地域経済の支援、環境への配慮がモチベーションとなっている。

最近注目を集めているのは、生産者が出店するファーマーズマーケットだ。豪農業資源経済・科学局(ABARES)によると、オーストラリアでの開催場所は160カ所以上。筆者がオーストラリアに来たてのころ、シェアメートは毎週末、朝早くからファーマーズマーケットに行って野菜を購入していた。新鮮なものが買えるのがスーパーとは違った点だ、と力説していたことを思い出す。

ファーマーズマーケットの特徴は開催時間が短いことだ。早朝から始まり、売り切れ次第終了というところも多いようで、寝坊して遅れていくと、店じまいに忙しい出店者に出くわすことになりかねない。お目当てのものがある人は、朝一に行くことをお勧めする。

■複数の販売口が必要?

直接消費者と話すことができる魅力がある一方、農家はファーマーズマーケット向けに労働力や時間を振り分ける必要もある上、既存のサプライチェーンよりも出荷量は少ないと思われる。趣味ではなく本業で農業をやろうと思えば、ファーマーズマーケット以外にも、市場への出荷やネット販売などを並行することになるだろう。

またある農家から、出店しているほかの業者が、別の場所から入手した農産物を「地元で採れた農産物」と偽って販売していると聞いたこともある。こうした草の根の活動は、信頼のおける範囲で始められることが多く、規模が大きくなった際に規則を守らない人は必ず出てくる。そのため、ある程度の規則を厳守させ、消費者がより安心して購入できる環境を作っていくことが重要だろう。

最近ではネットの普及により、幅広い消費者に対して、農家が農産物を直売することが可能になった。ファーマーズマーケットで作った人脈が、ネット販売で生かされることもあるようだ。また郵便局のオーストラリア・ポストが始めた農産物宅配サービス事業「ファームハウス・ダイレクト」は、ネット上のファーマーズマーケットとして話題を呼んでいる。

複雑なサプライチェーンを経て付加価値が付けられた加工食品はスーパーで買う一方、野菜や果実といった農産物は農家から直接購入する─。そんな流れが来るかもしれない。

 

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