第52回 オーストラリアとGM作物

米農業化学大手モンサントが今シーズン、西オーストラリア(WA)州で過去最大の遺伝子組み換え(GM)カノーラの種子を販売した。ABCニュースによると、今年は同州で730戸の農家が非GMからGMカノーラ栽培に転作したという。

早期の降雨と良好な価格でカノーラ自体を生産する農家が多いようだが、除草剤への耐性があり雑草管理が容易なこともあり、高収量が見込めるGMカノーラで収入を確保したい農家がその栽培を選択したものとみられている。

この最中、同州では有機栽培農家が近隣のGMカノーラ農家を相手取り訴訟を起こしている。原告のマーシュ氏が所有する有機栽培農場に、近隣のGMカノーラ農場から種子が飛来して発芽したことに端を発する。日本でも認知されている持続可能農業全国協会(NASAA)の有機栽培認証を得ていたが、マーシュ氏はNASAAの認証が取り消され、損失を被った。

ただ、近隣農家バクスター氏は、合法的にモンサントのGMライセンスと管理規約に基づき生産していた。両者は幼なじみでもあり、狭い農業コミュニティーで訴訟を起こすにはいろいろと苦労も多いだろう。

■GMと非GMの共存

有機栽培ではGM作物の混入が著しく規制されている。消費者目線でみれば、有機栽培で安心・安全が確保されることになる。だが、GM作物の混入だけでなく、農場の立地によっては河川の上流に農薬を使用する農場があることで、下流に位置する有機栽培農場は雨にしか頼れないといった話を聞く。また運搬用のトラックや人の行き来もあり、農場を完全な孤立空間にするのは困難である。

オーストラリアで商業的な栽培の許可が出ている食用のGM作物はカノーラと綿花だけだが、ほかの農産物は試験栽培が実施されている。有機農産物大国でもあるオーストラリアは、GMと非GM作物の共存をどう維持していくのか。WA州のケースで、それぞれの農家が保護される仕組みが作られるきっかけとなるか注目したい。

個人的な見解としては、オーストラリアが今後アジアへの需要に対応していくため生産量を上げることに注力するのであれば、GM作物栽培にテコ入れを図ることも考えられる。だが、WA州裁の判決の行方が産業に一石を投じるのは間違いないだろう。

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