第54回 食糧安全保障について考える(中)

食糧安全保障の大きな課題の一つに、スーパーマーケットの寡占がある。オーストラリアではほかの国に比べて、少ない数のスーパーが寡占状態を形成している。

ウールワースとコールズといえば、全国で知らない人はいないだろう。寡占状態の場合、スーパーは権力を駆使して、仕入れる食料の条件を決めることができ、その条件は農場にまでも反映される。大手スーパーが提示した環境や安全性、品質基準を満たすには、それなりの設備投資が必要で、基準を満たさない農家は販売先が見当たらない場合もある。

またロジスティクスの関係上、大手スーパー2社はインフラが整っている地域から農産物を仕入れる傾向がある。例えば、バナナの仕入れは大規模な倉庫とコールドチェーンが整っているクイーンズランド(QLD)州北部に集中している。

そのため、これ以外の地域のバナナ生産者は大きな市場から取り残される。産地の集約化はスーパーにとっては経済的だが、QLD州北部のバナナ農場はサイクロンによって壊滅状態になることもしばしばある。

■スーパーの一人勝ち

現在、バナナは1キロ2.5豪ドル(約220円)ほどで販売されているが、サイクロンが産地を打撃した年にはこれが同15キロほどまで上昇し、食卓からもレストランメニューからもバナナが消える。こうした状況を考えると、最も売れている食材の一つであるバナナを安定した価格で供給し続ける上で、大手スーパーの行動には疑問が残る。

さらに、弊紙でも何度も取り上げているが、大手スーパー2社は牛乳の価格競争に走っている。プライベートブランド(PB)牛乳が1リットル1豪ドルで、ほかの飲料より格段に安い。一部の地域では、生産コストの方が高くつき、離農する生産者も現れている。

牛乳の低価格競争は、酪農場数を減少させ、より大きな商業的酪農場が生き残るという、酪農産業の構造の変化につながる。

独自路線を行っているPB商品満載のドイツ系格安スーパー、アルディや、卸売り大手メットキャッシュのIGAもあるが、台頭する大手スーパー2社の市場シェアを浸食するには至っていない。

ある日本の関係者から、日系の食品メーカーが大手スーパー2社に商品を卸したくても、見向きもされないとの話を聞いた。まずスーパーの棚に参入することがいかに困難かを思い知らされる。

その一方で、消費者は、欲しいブランドの商品が手に入れずらくなっている。これでは、スーパーの一人勝ちは変わらない。

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