第56回 シドニー市に点在する市民農園

都市での食糧生産を考えるなら、コミュニティーガーデン(市民農園)の存在は欠かせない。市民農園とは、市民が運営する公共用地の食糧生産拠点。オーストラリアではシドニー市が、市民農園政策の先駆けだ。

面 白いことに、その政策の内容を読むと、シドニー市は市民農園を「幅広いコミュニティーの健康や福祉に貢献し、環境的・社会的・教育的な利益をもたらすレク リエーション活動」と認識している。つまり、食糧生産は二の次だ。ちなみに、市民農園は、シドニー市が掲げる2030年の持続的な都市の展望にも重要な役 割を担っている。

■鉄格子に守られる農園

今回は、シドニー中央ビジネス区(CBD)から15分ほど行ったウ ルムルーにある市民農園の様子を紹介したい。道路の高架下の公園にある、鉄格子で囲まれた一角が市民農園だ。治安があまり良くない同地では公共物の破壊行 為も見受けられるため、鉄格子でしっかりと保護されている。

この市民農園は設置されて14カ月。近隣の市民15〜20人が交代で世話をしている。現在は個人の区画が決まっているが、今後はすべての区画を協働管理に移行し、採れた野菜はメンバーで分ける。

当面の課題としては、水はけをよくしたり、菜園のプランターの角を丸くして安全性を確保したり、菜園を地面から1メートル程度高くして、汚染やペットのし尿から野菜を保護することが挙げられるという。

市 民農園ができるまでの過程はどうなっているのだろうか。市民はまず計画案を市に提出し、コンサルティングを重ねる。最終的には市の承認を得て、菜園の設置 に必要な補助金や献金を市から受給できるようになる。現在は、参加希望者に対し、新規の設置よりも既存の市民農園に参加してもらうよう促しているという。

■徒歩15分内に1つ

案内してくれたシドニー市の職員レイウィン・ブロードフットさんは「土地が限られる中、最近では公園の改修に合わせて、市民農園の設置を食い込ませている」と説明。公園内でも、子どもの遊び場に大人向けの運動器具、BBQエリアなど、競合対象は多い。

シ ドニー市には現在、市民農園が17カ所と歩道脇の菜園が3カ所がある。シドニー市は、2030年までに1キロ圏内(=徒歩15分内)に市民農園を設置する ことを目指している。現在はシドニー市の中部と西部にこれらが集中しているが、CBD内や住宅が密集している地域で今後どのように展開されていくか興味深 い。

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