第57回 シドニーの都市近郊農業

都市農業の概念には、都市の中と都市を取り巻く郊外での農業が含まれる。郊外に行けば、ある程度まとまった土地で農業が可能になり、いわゆる商業生産も可能になる。今回は、シドニーのシティーから車で1時間圏内の、豪邸や農場が入り交じるドゥラルにある農場を訪ねた。

今回訪れたのは、知的障害者施設に併設されている、バイオダイナミック農法を用いた農場だ。5ヘクタールの農場に卵用の鶏35羽とペット用のアルパカ3頭、牛2頭が飼育されているほか、ニンニクやオレンジ、葉物、カボチャなど、約40種類の野菜も育てている。収穫した野菜は主に農場に併設されているショップで販売している。

バイオダイナミック農法とは、哲学者のシュタイナーが提唱した、土壌の活力に注目した農法だ。有機栽培である上、地球と惑星の位置によって変わる生物活動を最大限に利用する。特に牛を大事にし、牛の角は切らずに残しておくほか、死去した牛の角に牛のふんを入れて土に埋め、特定の時間がたった後に掘り起こし、内容物を水で薄めて農場に巻き、生物活動を活性化させるなど、一風変わった農法だ。

■若者が農業を始めやすい環境

この農場は、障害者の人々が自然や動物に触れ合う機会を創造しようとの意向から1965年に設立された。数カ月前に農場管理者として働き始めたロブ・グレートホルダーさんは、もともと別の仕事をしていたが、家で野菜栽培をしたことがきっかけで農業の面白さを知り転職。オーガニック農場で経験を積んだ後、現職に就くことになった。

農場は障害者施設が運営するため、すべてを自分の思い通りに管理できないこともあるものの、生産費用は施設が負担する上、安定的な給与も得ることができる。そのため、農場管理者として第一歩を踏み出したい若者にとっては、非常に良い環境が整っているという。

サービス受給者である障害者の療養が優先されるため、一般市民への農場開放は公に行われている訳ではないが、平日開いている農場のショップは多くの地元住民でにぎわっているようだ。

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