第60回 放し飼いで鳥インフルの感染率増加?

オーストラリアではフリーレンジと呼ばれる養鶏方法が市民の支持を得ている。フリーレンジの定義を1ヘクタール当たり何羽にするか、という議論が随分長く行われているが、フリーレンジ議論は新たな局面を迎えている。ニューサウスウェールズ(NSW)州南西ヤング近くのフリーレンジ養鶏場で10月に低病原性の鳥インフルエンザが発生し、40万羽が処分されることになったためだ。

フリーレンジは鶏が外で伸び伸びと過ごせる飼育形態であるものの、連邦政府のジョイス農相が、フリーレンジは鳥インフルのウイルスを媒介する野鳥などと接触しやすく、鳥インフル発生率が上がると発言したことで議論になっている。

ABCルーラルによると、ある獣医師は「フリーレンジの鶏は野生の水鳥との接触機会が多いため、鳥インフルにかかりやすいのは常識」と述べ、同農相の発言を支持している。特に飲料水の汚染源になりやすく、ダムや川から水を引いてくる際には殺菌することが必要としている。水鳥との接触を減らすことが必要だが、養鶏場にはダムの設置が義務付けられており、鶏舎やその屋根からも水が集められることになり、水鳥を誘引しやすい状況を生んでいるという。

貿易関係にも影響

これに対し、動物愛護団体は反論している。ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(HSI)は「健全なフリーレンジ農場では鳥インフルが発生したことはなく、過密の飼育と工場的な農業から距離を置くことで、鶏が免疫をつけられ、鳥インフルがまん延することを最低限に抑えられる」と主張している。

ちなみに、そもそも先の養鶏場は、飼育数の基準を守っていなかったため、フリーレンジにさえ当たらないと指摘している。HSIによると、該当の養鶏場は1ヘクタール当たり約8万羽を飼育していた計算になるという。

スーパーのウールワースとコールズは、プライベートブランド(PB)の卵に同1万羽の上限を設けている上、フリーレンジ業界では2万羽かそれとも1,500羽かという所で議論がされており、今回の件は健全なフリーレンジ卵農家も怒っているそうだ。

今回の件は、貿易関係にも影響を及ぼす惨事でもある。NSW州で鳥インフルが発見されたことで、日本は早々輸入を停止。オーストラリア産は微々たるものである日本ならまだいいだろうが、オーストラリア産鶏肉の主要な輸出先である香港も輸入を停止している。

スーパー大手はケージ飼いの卵の販売をやめる方針を取っており、今後ますますフリーレンジ卵の扱いが増えることは間違いない。国内の需要と鳥インフルの感染リスク─。これらのバランスの取りがより重要になっていくことだろう。

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