第61回 豪州の食糧庫計画は夢で終わる?

オーストラリアはアジアの食糧庫になれる─。オーストラリアでよく耳にする言葉だが、実際はアジア諸国におけるオーストラリア産の農産物シェアは減少しているようだ。

オーストラリア農業研究所(AFI)によると、オーストラリア産のアジア向け農産物が輸出全体に占める割合は、2007/08年度の57%から11/12年度の63%に拡大した。その一方で、競合国の輸出拡大のペースに追いつけていないという。

日本と中国、韓国、インドネシア、インドの5カ国に限れば、オーストラリア産のシェアは1996年の9%から徐々に減少し、2012年には7%まで縮小。もう一つの巨大な農業大国である米国も同期間にシェアを27%から21%に減少している。では勝者はというと、ブラジルとニュージーランド(NZ)だ。ブラジルは08年にオーストラリアを追い越し、12年にはシェアを10%にまで拡大。NZも輸出額を4倍に増やしている。

また、アジア向け農産物輸出額の年間成長率が、01〜05年の5年に比べて、次の5年の方が減少しているのは、主要輸出国ではオーストラリアのみとなっている。

■供給可能量は需要の2%?

中国市場だけに絞れば、オーストラリアのシェアは2000年以降縮小している一方、米国とブラジルはシェアを拡大している。米国からの中国向け輸出は、3分の1が大豆だ。オーストラリアが唯一大半のシェアを握っているのはワイン市場。オーストラリア産のボトル入りワインは輸出額で、フランス産に次ぐ2位のシェアを占めている。

オーストラリアの農業新聞によると、ある中国の農業会社のオーストラリア人最高経営責任者(CEO)は「オーストラリアがアジアで重要なプレーヤーであることに変わりはないが、需要を満たすだけの食糧を生産できないことから、食糧庫としてはとらえられないだろう」と述べている。オーストラリアはなんとアジア需要の2%しか供給できないとまで指摘。アジアでシェアを獲得できない分野として、鶏肉と豚肉を挙げている。

オーストラリアは今年、アジアへの輸出拡大を中心に据えた長期的な食糧政策「全国食糧計画」を発表しているが、これを実現するには早々に国内の体制を整え、競合国の動きを見据えながら輸出を強化することが必要だろう。アジアで食糧需要の伸びしろがあるうちにシェアを獲得しておかなければ、将来「われわれはアジアの食糧庫だ」と主張したところで、誰も耳を傾けない状況になりかねない。

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