第62回 農業にかかせないもの

農業に必要なものは、農地や労働力、水資源、種子……などたくさんあるが、あまり注目されていないものがある。それはハチだ。もし農地にハチがいなければ、農家は人力で受粉させる必要がある。

オーストラリアには、欧州人の入植時に持ち込まれ、その後野生化したセイヨウミツバチと、在来種のハチがいる。セイヨウミツバチの行動範囲は5〜8キロで、現在ではオーストラリア全土に住み着き、農業で重要な役割を果たしている。一方、在来種のハチは体がハエよりも小さく、500メートルほどしか飛ばない。ハチミツの生産量はセイヨウミツバチの方がはるかに多いが、花蜜や花粉の奪い合いはない。オーストラリア原産のマカダミアナッツの受粉は在来種のハチが行っているなど、通う花もすみ分けができている。

オーストラリアはハチの観点から見ると、非常に恵まれた土地。なぜなら、ハチの強敵であるダニが存在しないからだ。ただ、輸入品に紛れてダニに寄生されたハチが侵入する可能性もあり、5年以内にはオーストラリアにもミツバチヘギイタダニと呼ばれるダニが進出するとみられている。そうなれば、国内のハチの大幅な減少につながることは回避できない。

■若者に人気の養蜂

ハチの重要性は都市でも同じだ。現在、都市農業への関心の高まりにより、裏庭やベランダで家庭菜園に取り組む市民が増えた。都市農業を成功させるには、ハチがいなければならない。

シドニーでミツバチの巣箱を管理する団体にアーバン・ビーハイブスがある。「オーストラリアではハチ=攻撃するという固定観念があるが、世界的にはハチの減少が危ぶまれていることを伝えたかった」と語るのは、共同創立者のダウ・パーディーさん。

現在はレインコーブから中央ビジネス区(CBD)、ボンダイ・ジャンクション、マリックビルの範囲で、巣箱66個、約8万匹のハチを管理している。CBDではシャングリラホテルやスイスホテルにも巣箱があり、貸し出した巣箱の管理や、ハチミツの採取がダウさんの役目だ。ハチミツは設置場所のホテルやレストラン、カフェが受け取る分と、ダウさんが集めて地域のスーパーで販売する分がある。

ダウさんによると、オーストラリアはハチの認識について世界より遅れていたが、最近は認識が急速に広まっている。得に若い年代層で、裏庭での養鶏と同じように養蜂にも感心を示す人が増えてきているようだ。

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