第33回 ルーラルコ・ホールディングスって何?

オーストラリアの主要産業の一つである農業は、土壌のかんがいシステムの整備や、農業用ハイテク機器の利用面で、変革の時期を迎えています。そんな中、資産管理やソフトウエア開発など多角的なサービスを提供する会社に、タスマニア(TAS)州拠点の農業関連サービス企業ルーラルコ(Ruralco)ホールディングスがあります。ルーラルコは農村部が抱える課題にどんなソリューションを提供しているのでしょうか。【関和マリエ】

 

1970年にクイーンズランド州で創業したルーラルコは、2006年、オーストラリア証券取引所(ASX)上場企業で1865年創業のTAS州の農業・不動産会社ロバーツと合併し、オーストラリア全土で事業を展開する現在の形態になりました。

同社は肥料、羊毛、家畜、不動産の販売のほか、かんがい用水取引のシステム開発、農産品のリスク管理、金融や保険商品の取り扱いなど、農業全般に関する事業を手掛けています。現在、グループ全体で40種類以上の専門ビジネスを持ち、国内の支店は500店以上、従業員数は約2,000人です。

同社が今年発表した2016/17年度3月期(16年10月?17年3月)中間決算では、純利益が前年同期比15%増加し、過去最高となる1,240万豪ドル(1豪ドル=約87円)を記録しています。天候に恵まれたことで肥料などの販売が増え、主力の農業サービス部門が伸びたもようです。

同社は近年、事業のさらなる多角化にフォーカスしており、家畜や酪農などのバリューチェーン全体の市場シェアの拡大や、アグテック(農業関連テクノロジー)の「次の波」に乗るための事業パートナーシップなどに力を入れているようです。

かんがい事業に注目

オーストラリアでは、農業生産の要であるかんがい用水の確保のために連邦政府が補助金政策を実施していることから、近年かんがいインフラなどに対する農家の投資が進んでいます。

そのためルーラルコは、かんがい事業が魅力的な投資先になっているとして2月、かんがい事業を行うイリゲーション・タスマニアとミルデュラ・イリゲーション・センター、リバー・レインの3社を買収。このうちイリゲーション・タスマニアは、同州の農家で見られる回転式の「ピボット・イリゲーター(pivot irrigator)」などのかんがいシステムの設計と設置を手掛ける企業で、買収額は約1,992万豪ドルでした。ルーラルコは昨年にも、リバーランド・イリゲーションとハンター・イリゲーションを傘下に収めています。

また今年7月にはオーストラリア東部のマレー・ダーリング盆地などの水取引のために、かんがい業者、農家、仲買業者、投資家などが利用可能なオープン・プラットフォーム「waterexchange.com.au」の運用を開始しました。

これまで大規模事業者による水利権の占有や価格の不透明性が懸念され、農家の課題の一つになっていましたが、同プラットフォームを利用すれば24時間以内のすべての水取引が記録され、ほぼリアルタイムで取引を確認することができるため、農業用水取引の透明化に役立つとみられています。

アグテック分野でも貢献

最近ルーラルコはオーストラリア科学産業研究機関(CSIRO)と提携し、ドローン(小型無人機)を利用した生産性向上プロジェクトに取り組んでいます。将来的には、衛星利用測位システム(GPS)を利用し電子タグを付けた牛をドローンで遠隔管理する技術や、農場での飼料や肥料の効率的な管理方法などの実用化を進める計画です。

ルーラルコのトラビス・ディロン最高経営責任者(CEO)は、ドローン技術は農業におけるデータ主導型の意思決定を促進しており、農家が問題を分析するために役立つと説明。同CEOは「農業生産における次の成長の鍵がどこにあるかは分からないが、技術とデータは確かにその中心にある」と述べており、今後ルーラルコがオーストラリアのアグテック分野の発展に一層貢献していくことが期待されます。

 

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