第1回 外食の進化形 「ポップアップレストラン」

オーストラリアの「食」に携わって23年。当時は為替が1豪ドル=60円ほどの時代。物価は安いが、一流と呼ばれる以外のレストランやテイクアウエーの料理の質の低さに仰天したものです。日本でイタリア料理や和食など、週6回は外食していた筆者にとって、オーストラリアの外食事情はかなり“厳しい”ものでした。しかし最近では、この国の「食」もだいぶ変わってきました。長年にわたり外食に接してきた経験から、オーストラリアの外食トレンドを紹介していきたいと思います。

スターカジノ内のポップアップ

スターカジノ内のポップアップ

シドニーに移り住んだ当初、例えばライカートというイタリア人街には、イタリア料理店が立ち並んでいますが、出されたスパゲティはアルデンテとは程遠く、ピザの生地は厚くて、まるでパンを食べているように重かったものです。

しかしその後、シドニー五輪や移民の受け入れ強化などで、2000年ごろからシドニー中央ビジネス区(CBD)のデパートは週末も営業するようになり、モダンに整備されて、すてきなレストランが増えました。バブルに突入すると、評判の一流レストランの予約は、最短でも3カ月?半年待ちになります。その反対に、たとえ老舗でも、料理の質が劣るレストランは姿を消しました。オーストラリア統計局のデータを見ると、食への関心が高まる中、00年に1万4,199軒だったカフェ・レストランの数は07年には1万3,987軒に減り、淘汰(とうた)が進んだことがわかります。

さらにここ2〜5年で、外食産業の形態や、ローカル客の「食」へのお金の使い方も変化しており、最近では期間限定の仮店舗「ポップアップ(Pop-up)」が出てきました。ポップアップで出店した後に店舗を構えるレストランや、すでにローカル客に人気の日本食レストランがカジノ内に別にポップアップを構え、期間限定でラーメンを提供するなど、その形態もさまざまです。

バランガルーのポップアップ

バランガルーのポップアップ

■バランガルーのポップアップ

オーストラリアの人口は日本の約5分の1ですが、付加価値の高い「食」への消費意欲は旺盛です。「世界一」の栄冠に輝き、予約が取れないことで有名なデンマークのレストラン「NOMA」が、シドニーCBD西部の新開発地区バランガルーに10週間限定でポップアップ店を出しました。食事と合わせたワインとのコースが1人当たり580豪ドル(1豪ドル=約80円)と高額だったにもかかわらず、用意した座席数5,500席は予約開始からあっという間に満席。約2万7,000人がキャンセル待ちという事態になりました。

豪華カジノが建設中のバランガルーでは現在、ポップアップ3店舗が店を構えます。その一つ、ローカルに人気のチキンショップ「Belles Hot Chicken」は、広さが約16平方メートルと小さめながら、平日週末問わずに客が入る人気店です。チリ好きの多いオージーがシドニー湾の眺望をバックに、手づかみでチキンを食べる姿は豪快でもあります。

「ポップアップレストラン」は今後も、さまざまな形で進化を続けそうです。

【著者プロフィール:Hiromi CK】
1993 年よりシドニー在住。大手日系企業現地法人で会計・総務・人事マネージャーを経てコンサルタントとして独立。日本の中小企業が海外進出する為のコンサルティング、政府機関のプロジェクトにも参加。おいしい物が大好きで、オーストラリアの食を知り尽くした一流シェフとも20 年以上の交流を持つ。
問い合わせメール: hiromick100*gmail.com(送信する際には*を@にしてください)

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