平常運転

オーストラリア政府が外出規制を発表して4週間目。いまや不特定多数の人間と空間を共にするのはスーパーマーケットぐらいだが、店内で社会的距離を維持するのは難しく、人となるべく接近しないよう、通路を右往左往している。

酒はディスカウントショップではなく、近所の酒屋で買っている。ここは鉄格子のドアが閉まっていて、客が来ると店主が開けてくれる。ほかの客を見たことがなく、人と接触する可能性が限りなく低い。

いつも同じ銘柄のビールしか買わないのだが、手ごろな赤ワインがないか尋ねると、嬉しそうに近づいてきた。距離を取ろうと思わず後ずさり、陳列棚に背中をぶつけた。高そうなワインを危うく落として割るところだった。まるでコントである。

「最近、商売はどう?」と尋ねると、「うーん。あまり変わらないね」とマスクを着けた顔が下を向く。普段から客がいないのだから当然か。悪いことを聞いてしまったと、こちらも下を向いた。(城一)

公式SNSをフォロー