殻よりもろい誇り

オーストラリアで暮らしていて、ある習慣が根付いた。卵を購入する際の中身チェックだ。初めてその行為をする客を見た時には、なんて非常識でケチ臭いんだと驚き、外国での生活が始まったこと実感した。日本では値段と賞味期限以外のことを気に留めたことがなかったからだ。買う前に開封するのはマナー違反、こちらはマナーを守ることを誓った。

しかし後日、ヒビが入り汚れがついた卵を目にした時にはその誓いはもろく崩れた。やむを得ずはじめの一カ月ほどは罪悪感を抱きながら周囲を警戒してパックを開けていたが、今となっては何も感じることなくパックを開け、長い時には数分間も品定めをするようになった。

しかし、マナーを守る日本人の誇りを捨ててパックを開けていいのだろうか。今日こそは一番手前に陳列された卵を迷わず購入するか。いや、まず無理に違いない。(七太)

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