子豚に授乳

弊紙で連載の「オオゲツヒメの食卓」では、いずれは商品として売る肉牛への、畜産農家の思いが記されている。ただこの感覚は、部外者にはなかなか分かりにくい。少しでも理解したいのだが、想像できない。

そこで思い出したのが、パプアニューギニア(PNG)のハイランド地区での豚の飼育だ。基本的に豚の世話は女性がするが、女性は自分の子供と同じように、子豚に対して自分が授乳する地域があるという。子供も子豚も同じように扱われているのだ。その地では、豚は自家消費のために育てられているのではない。男性が中心で行なわれる儀礼で、別の部族の男に与える目的で飼育されている。

日本の牛は商品で、PNGの豚は贈り物という違いはある。しかし、どちらも他者に与えることを前提にしながら、大切に育てられている。意外に、宮崎の畜産農家とPNGの人々の感覚は近いのかもしれない。(頼徳)

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