外食の心得

かつて、「鍋焼きうどんは凶器である」と喝破したのは筒井康孝氏だ。氏の小説を読んで以来、飲食店でグツグツ煮立った料理が運ばれてくると思わず緊張する。店員さんが自分のような粗忽者だったりすると危険なので、いつでも逃げられる体勢を取るようにしている。

注意を払うべきは汁物だけではない。知り合いが友人と韓国料理屋で食事をしていると、大きな音がした。据え付けが悪かったのか、無人のテーブルの巨大な換気ダクトが天井から落下したのだった。店の人は笑ってごまかしたそうだが、知人は幼い子どもを連れており、自分たちのテーブルに落ちていたらと思うと、背筋が凍ったという。

お目当ての店にたどり着き、店員ともめずに注文でき、皿の中に異物を発見することなく食事を終え、滞りなく勘定を済ませ、大酒で足元がふらつきながらも無事に自宅に帰ることができれば、それは味以前の問題として、素晴らしい外食だったといえるだろう。(短吉)

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