ノーストーリー

もう10年以上も前、英会話学校の生徒たちのパーティーにお邪魔したことがある。韓国人学生もいて、見慣れた色の菓子袋を持ってきていた。「かっ○えびせん?」と思ってよく見ると、韓国製品だった。

当時は初めて見るコピー商品に興味津々。食べてみると形も味も本家にそっくりだ。感心していると、その学生はオージーの英語教師に「このお菓子は、韓国ではとても長い歴史(ロングヒストリー)があるんです」と自慢を始めたので、日本がオリジナル、とは言いだせなくなってしまった。

英語教師は「なるほど。どんなストーリーがあるの?」。聞かれた学生は「……ストーリーは、ないです」。それはそうだろう。自分も「えびせん」誕生の秘話を語れといわれたら困るし、まして英語でとなれば黙るしかない。

それを聞いた教師は「ふむ。ロングヒストリー、ノーストーリーか」とつぶやいた。あざやかな脚韻と、その場の妙な雰囲気が、いまだに忘れられない。(短吉)

 

公式SNSをフォロー