食べ物への尊敬

職場近くを歩いていて目を見張った。配送トラックの運転手が、飲料の入った箱をそのまま踏み台にして荷台に上がり、商品を運び出していたのだ。店の前で堂々と踏みつけているのは、最終的に客が口にする食品である。

スーパーのレジ係もそうだが、専門の肉屋やレストランの厨房など「食のプロ」さえも、ほらよとばかりに食材を投げて渡すなど、テレビの料理番組を見ていても食品の乱暴な扱いに眉をひそめることがある。食品を投げる、足蹴にするという行為に抵抗があるのは日本人だからか。

知り合いのオージーのシェフは、日本の修行先で見た、食材に対する丁寧で尊敬に満ちた接し方に感動したそうだ。しかし、そんな日本は、年間5500万トンの食料を輸入しながら、1800万トンを廃棄する飽食の国でもある。食べ物を大切にするのは日本人の素晴らしさだと自負してきたが、米国を上回る食品廃棄率に、日本人の本当の姿が分からなくなる。(葉羽)

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