ビターフェイス
ウェルス編集部散歩の途中、酒類量販店に寄り道すると、屋外駐車場でガチャンと音がした。白人の中年男性が白ワインの瓶を持ち上げて見ている。どうやら買ったばかりのワインを落として割ってしまったらしい。
男性は瓶を持って店に引き返していく。もともと割れていたので取り替えてくれと文句を言うつもりだろうか。「とんだ迷惑だ」というふうな、苦虫をかみつぶしたような表情を作っている。
男性は通常の入り口ではなく、誰もいないレジから店内に入ると、店員とは目を合わせずに真っすぐガラス張りの冷蔵ショーケースに向かい、割れた瓶を新しい瓶と交換して、もと来たレジを通って外に出て行った。ずっと苦い顔を作ったまま。
さすがに交換してくれとは言えなかったのだろう。こわもてに見えたが、心中は穏やかではなかったはずだ。自分なら当然のように買い直すと思ったが、それはいつも安ワインばかり選んでいて、さほど懐が痛まないからかもしれない。（城一）
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