第4回 オーストラリアの遺伝子組み換え食品

消費者として気になるのは食の安全。西オーストラリア(WA)州では以前、遺伝子組み換え(GM)カノーラをめぐり、有機農家が隣人のGM農家を相手取って起こした訴訟が話題になりました。

GM作物の特徴は大きく2つあります。害虫に食べられないこと(害虫抵抗性作物)と、除草剤をかけても枯れない(除草剤耐性作物)ことです。害虫抵抗性作物は、害虫にとって毒となる微生物の遺伝子を一部農作物の中に組み込むことで、虫による被害を防ぎます。また、除草剤耐性作物は、米モンサント社が開発した除草剤「ラウンドアップ」(主成分:グリホサート-Glyphosate)が効かないように遺伝子操作された農作物です。ラウンドアップは、植物の体内でエネルギーを作るしくみを阻害し全ての植物を枯らすことができますが、農作物もそのままでは枯れてしまいます。GMトウモロコシなどは前者、GMカノーラは後者に当たり、両方の特性を併せ持ったGM作物もあるそうです。

GM作物を導入するメリットは、殺虫剤や除草剤の使用を減らすことができ、収穫量も増え、生産者は手間を削減できるという点だと言われています。確かに広大なオーストラリアの土地で農業をする人々にとっては、政府による奨励も後押しし、GM作物の登場は喜ばしいものかもしれません。

その一方で、消費者がGMフードを受け入れているかどうかは別の問題です。オーストラリアでは、自然志向の「オーガニック」が生産者や消費者から支持されており、自然との共存や健康、安全性を意識する人は、人工的なGM技術にも否定的です。GM作物の安全性については意見が分かれていますが、WA州政府はGMの推進派です。

日本で非GMカノーラにこだわる生協などでは過去、WA州からカノーラを輸入するなどしていたようですが、2010年以降の同州でのGM解禁を受け、現在もGMが禁止されているタスマニア州の農家などに調達先を移すなど、非GMのカノーラ油の製造に腐心しているようです。

■GMは身近な話題

以前通りがかった公園で偶然GM反対のイベントが開かれていました。全く難しそうな雰囲気ではなく、音楽の演奏もありくつろいだ感じで、少し驚いたのを覚えています。親子連れや若者も多く、GMに関心を示すのは特別なことではないのだな、と思いました。

オーストラリアに住む消費者として、GM食品を選ばないという基本的な方法はあります。食品表示では基本的にGM食品、食材、添加物などは表示する義務があります。しかし表示しなくてもよい例外もあるので注意が必要です。飲食店など外食産業ではGMの表示義務はなく、「GM free」や「non GM」などの表示は、自主的なものだそうです。

■豪産は基本的にGMフリー

現在、オーストラリアで商用栽培されているGM作物はカノーラと綿花の2つだとか。つまり国産の農作物(青果など)は、基本的にはGMフリーだと考えられます。カノーラ油や綿実油は例外です。

国産の食品を選ぶことがGMフリーにつながると言いたいところですが、調味料や加工食品、肉・卵・乳製品などには、原材料や飼料にGM作物が使われている可能性があります。

どうしてもGMフリーの食品を選びたい場合は、オーストラリアの厳しいオーガニック認定を取得した食品を選ぶのが一番確実、というところでしょうか。

 

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投稿者プロフィール

名取 知衣子
1973 年東京生まれ。2013 年から西オーストラリア州・パースに在住。夫、ハイスクールに通う長女、プライマリースクールに通う長男の4人家族。日本と異なる生活に試行錯誤するうちに、オーストラリアの豊かな食事情に興味を持つようになる。オーストラリアのローカル食材を使って日本人が手軽に楽しめる家庭料理を研究中。レシピをブログ「パースで手作りざんまい(http://perth-zanmai.com/)」で公開している。