第16回 ソイソースはしょうゆじゃない!?

今回は日本人にとって海外でも切っても切れない調味料、しょうゆです。海外で暮らしていると、しょうゆという調味料はユニークなものだなと感じます。その味わいや香りは、「日本料理らしさ」を特徴づける非常に大きな要素ですよね。

中国のしょうゆ。試してみたいと思っています

中国のしょうゆ。試してみたいと思っています

「ソイソース」という言葉はそのまま日本のしょうゆを意味するのだと思っていましたが、パースに来て、ソイソースとは日本だけでなく、中国、韓国、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシアなど、アジアのさまざまな国のものを含めた総称であることを知りました。日本のしょうゆを特に指定したい場合は、ジャパニーズ・ソイソースです。

とは言え、一般的にソイソースといえば、中国か日本のしょうゆのことを指すようです。どちらも主な原料は、大豆、小麦(中国では小麦粉)、塩、水です。大豆と小麦を合わせたものに麹菌を繁殖させ、その後食塩水に漬けて発酵・熟成させます。最終的にそれを絞り、殺菌や品質安定のために加熱して仕上げたものが販売されています。

中国のしょうゆは主に「ライト」と「ダーク」の2種類があり、ライト・ソイソース(生抽)は、色が薄くて塩味が強く、サラッとした液体です。逆にダーク・ソイソース(老抽)は、色が濃くドロッとしていて、甘みが強め。生抽は日本のしょうゆの代用品としても使えそうです。老抽は煮込み料理や炒め物などで、濃い色付けや照り、甘みを出すために使われるようです。インドネシアやタイなどほかのアジア諸国のソイソースも、それぞれの国の料理に合った特徴があり、日本のものと比べて甘みなどが強かったりします。

海外の料理本でソイソースの言葉を見つけたら、どの国の料理か、どの国のソイソースを使えばよいのかをチェックしたほうがいいですね。

■「ケミカルしょうゆ」?

しょうゆは微生物の力で発酵させ、半年~1年以上の年月をかけて作られますが、人工的にたった2~3日で作られるものもあります。この「ケミカルしょうゆ」、植物性たんぱく質を塩酸と混ぜて酸分解し、生成された液体を炭酸ナトリウムで中和した「アミノ酸液」が主成分で、これに色素や甘味料などを加えて風味を調整したものです。私が店頭でみつけたあるソイソースの原材料表示には、原料に大豆ではなく、植物タンパク質加水分解物(hydrolyzed vegetable protein)と書いてありました。ケミカルしょうゆです。

最近は欧米でもアジア圏の食文化への理解が深まっていて、このように人工的に作られたしょうゆはケミカル・ソイソースと呼ばれ、発酵の力で醸造されたしょうゆ「ナチュラル・ブリュード(天然醸造)・ソイソース」と区別されるようになってきました。たいていの場合、風味の良さに加えて健康や食の安全という点で、ナチュラル・ブリュード・ソイソースが勧められています。

■日本のしょうゆを買いたい場合

パースで日本のしょうゆを買おうと思った場合、主な選択肢は、地元スーパーマーケットで販売されている日本の大手キッコーマンの海外製造しょうゆか、日本食材店などで手に入る日本から輸入されたしょうゆです。日本から輸入されたものは値段が高めですが、問題なく手に入ります。入手しやすくオージーに知られているのはキッコーマンのしょうゆです。

以前キッコーマン・オーストラリアに質問したことがありますが、オーストラリアで販売されるキッコーマンのしょうゆは、シンガポール工場で製造されたものです。遺伝子組み換え(GM)食品に厳しいオーストラリア向けにGM大豆は使っておらず、菌などの発酵作用を利用して醸造されているそうです。

アジア各国のソイソース。大豆と小麦を発酵させて作ったソース、という点では同じですが、それぞれに特徴があり、独自の使い方があるそうです。海外暮らしを通じて、しょうゆの奥深さに驚いています。

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投稿者プロフィール

名取 知衣子
1973 年東京生まれ。2013 年から西オーストラリア州・パースに在住。夫、ハイスクールに通う長女、プライマリースクールに通う長男の4人家族。日本と異なる生活に試行錯誤するうちに、オーストラリアの豊かな食事情に興味を持つようになる。オーストラリアのローカル食材を使って日本人が手軽に楽しめる家庭料理を研究中。レシピをブログ「パースで手作りざんまい(http://perth-zanmai.com/)」で公開している。