第19回 香りを楽しんで温まる、タイの定番スープ

だんだん日が短くなり、寒くなってきましたね。そうなると食べたくなるのは、温かいスープ。今回は私の大好きなスープ、タイ料理のトム・ヤム・ガイ(Tom Yum Gai)のレシピをご紹介します。パースは朝晩は寒いものの、日の当たる日中は気温が上がり、汗ばんだりします。まさに「さむあたたかい(笑)」時期にちょうどいいのがこのスープ。さわやかな香りと温かさの両方が味わえます。

日本でもタイ料理は人気ですよね。私は辛いものが好きで、日本にいたころは「トム・ヤム・クン(Tom Yum Goong)」などを食べていました。パースに来て面白いと思ったのは、世界の料理が楽しめるところです。オーストラリア料理というと「とにかく肉」という感じですが、世界中の料理や食材が身近にあるのは良いところだと思っています。買い物をしながら見慣れない食材を見つけるのが面白く、そのたびに「これは何?どんなふうに使うの?」と興味津々でした。「タイの食材もありそうだから、トムヤムクンが作れるかも」と思いつき、ネットで調べてみたのです。行き当たったのがThaiTable.com というタイ料理のレシピサイト。タイのお母さんが家庭で作る素朴な家庭料理です。

そこで知ったのが、トム・ヤム・クンのクンとはエビのことで、エビの入ったスープだということ。そしてトム・ヤム・ガイのガイは鶏肉のことで、エビではなく鶏肉の入ったスープです。鶏肉ならエビよりも手軽に作れそうだとトム・ヤム・ガイに挑戦しました。

タイのだしスープに欠かせない「三種の神器」

■トムヤム独特の風味を作る

トム・ヤム・ガイのスープに欠かせない材料は3つ。カフィア・ライムの葉、ガランガル(Galangal)、レモングラスで、スーパーマーケットで手に入ります。日本ではこぶみかんの葉と呼ばれるカフィア・ライムの葉は、2つの葉がつながったような不思議な形。葉をちぎると、驚くほどさわやかな柑橘の香りがフワッと広がります。ガランガルはショウガのような形で、スライスすると、甘さと苦さが混ざったような、スパイシーな個性的で深みのある香りがします。レモングラスは日本でもおなじみのハーブですね。日本では乾燥したものがよく売られていましたが、ここでは野菜コーナーなどで売られており、生の状態で使います。この3つの香りが混じると、なんとも言えない、唯一無二の香りが誕生します。キッチンに香りが広がって、ちょっと感動しました。

また、スープにトッピングするコリアンダー(パクチー)、ライムの果汁、タイバジルを加えることで味が一気に引き締まり、強さが加わります。スープを作った後、ぜひ一手間かけてみてください。辛いと子どもが食べられないので、スープには辛味を付けず、最後に大人だけ刻んだ生の唐辛子を加えます。

トム・ヤム・ガイのスープを作りながら面白いなと思ったのは、日本のだしの取り方に似ていることです。タイ料理のレシピによく登場しますし、タイを象徴する風味なのかもしれませんね。

■わが家の味

ネットから得たレシピを基に、自分なりにアレンジしてみました。肉が苦手な息子のために、鶏肉とタマネギに加えて、ニンジンとレタスを加えるのがわが家の定番です。分量や詳しい作り方はブログで紹介しています。

まず小鍋にカフィア・ライムの葉、ガランガル、レモングラスを入れて水で数分煮込み、香りを出してスープを作ります。別の鍋で鶏肉とタマネギをいため、こしたスープを加えます。ニンジンを入れて10分ほど煮ます。レタスを加えて軽く火を通したらフィッシュソースを少しずつ加えて味を整えれば完成です。

私はタイに行ったことがなく、タイ料理を知っているかというと、実のところ正直分かりません。今回紹介したトム・ヤム・ガイも本場の味とは言えないと思いますが、家族が皆喜んでいるので、いいことにしています。

日本と比べて多国籍の食材が手に入りやすいオーストラリア。機会があったらぜひ作ってみてください。

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投稿者プロフィール

名取 知衣子
1973 年東京生まれ。2013 年から西オーストラリア州・パースに在住。夫、ハイスクールに通う長女、プライマリースクールに通う長男の4人家族。日本と異なる生活に試行錯誤するうちに、オーストラリアの豊かな食事情に興味を持つようになる。オーストラリアのローカル食材を使って日本人が手軽に楽しめる家庭料理を研究中。レシピをブログ「パースで手作りざんまい(http://perth-zanmai.com/)」で公開している。