第22回 オーストラリアの卵、フリーレンジはなぜ人気?
オーストラリアで販売されている卵のパッケージにはケージエッグ(Cage Egg)、バーンレイドエッグ(Barn-laid Egg)、フリーレンジエッグ(Free Range Egg)などの表示があります。パースに来た当初は「一体どれを選べばいい?」と悩んだものでした。
値段から言うと安いのはケージエッグで、1パック12個入りで、サイズにより2~4豪ドル(1豪ドル=約87円)ほど。フリーレンジエッグは、その倍の4~8豪ドルが相場でしょう。
ケージエッグの場合、卵を産む雌鳥はバタリーケージなどと呼ばれるかごの中で飼われています。感染病の予防や衛生管理がしやすく、また生産性が高いため、多くの鶏卵生産者がこの方法を採用してきました。ケージエッグが比較的安価なのはこのためです。
しかしバタリーケージで鶏1羽に与えられたスペースは、たったの約20センチ四方。鶏たちは羽を伸ばすこともできず、狭い中でつつき合うことを防ぐため、生産者がくちばしを切り取ります。密集状態や運動不足、ストレスなどから病気になりやすく、抗生物質の投与が多いそうです。
近年、動物が苦痛や恐怖を与えられたり、動物本来の行動を制限されることがあってはならないという「アニマルウェルフェア」の考え方がヨーロッパを中心に世界的に広まり、ケージを使用した養鶏をやめよう、という動きも出てきています。
これに対し、十分な広さの屋内で、自由に歩き回れる状態で飼育された鶏の卵をバーンレイドエッグと呼びます。
■フリーレンジエッグの人気
フリーレンジは鶏をケージに入れず、自由に歩き回れる環境で飼育するので、ストレスが少ない環境で、鶏は健康的に過ごすことができます。ただしフリーレンジには広い敷地が必要で、産み落とされた卵を集める人手が必要になるなど、管理に労力がかかることは否めず、高価なのも納得です。
オーストラリアの消費者団体チョイスが2014年に1,969人を対象に行った調査によると、65%の人が過去1年以内にフリーレンジエッグを購入したそうです。その理由として、「アニマルウェルフェア」を挙げた人が68%、「生産者を支援したい」が52%、「味が良いから」が44%でした。
消費者の好みを反映し、大手スーパーマーケットやファストフードチェーンでもケージエッグの取り扱いを減らす動きが起きています。
■信頼できる卵を買う
フリーレンジで飼育するためには、飼育密度のほかにも、鶏本来の習性を尊重するために「砂浴び」をする場所や「止まり木」、安心して卵を産める場所があるかなども大切な要素だそうです。
「フリーレンジエッグ」について、「Australian Consumer Law (Free Range Egg Labelling) Information Standard 2017」という法律がありますが、生産方法が厳密に定められているわけではありません。動物保護団体や鶏卵産業の協同組合などは、法律より厳しい飼育ガイドラインを個々に設けています。ただ団体により、飼育数は1ヘクタール当たり185羽から1万羽までと幅が広過ぎて、何を信じたらいいのやら…。
以前、フリーレンジのラベルを不当に使用した鶏卵を販売した業者が摘発されたニュースもありました。衛生面の管理も含めて悪質なケースもあるので気になります。
パースで信頼できる卵を購入する機会の一つとして、週末に各地で開催されるファーマーズマーケットがあります。どこのマーケットでも、たいていパース近郊産のフリーレンジエッグを生産者が直接販売しているので、「いつ採れた卵?」「どんなエサをあげてる?」などと質問すれば、納得して買うことができるでしょう。
投稿者プロフィール
- 1973 年東京生まれ。2013 年から西オーストラリア州・パースに在住。夫、ハイスクールに通う長女、プライマリースクールに通う長男の4人家族。日本と異なる生活に試行錯誤するうちに、オーストラリアの豊かな食事情に興味を持つようになる。オーストラリアのローカル食材を使って日本人が手軽に楽しめる家庭料理を研究中。レシピをブログ「パースで手作りざんまい(http://perth-zanmai.com/)」で公開している。
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