第27回 パースでツナ缶を選ぶ

パースのスーパーマーケットで購入できるツナ缶は主に、「in Springwater(天然水漬け)」、「in Olive Oil(オリーブオイル漬け)」、「in Brine(塩水漬け)」の3種類です。
私は、料理用に天然水漬けを買うことが多いです。原材料は「魚と天然水」のみです。食塩無添加なのでそのまま食べるには味気ないかもしれませんが、料理に使うには便利です。
塩水漬け(Brine)を料理の具として使う場合は、塩加減に注意する必要があります。
そのほかに、オリーブオイル、レモン、黒こしょう、トウガラシなどで味付けされたものなど、豊富なバリエーションを見かけます。これらはおつまみ風に食べるのにちょうどよいかもしれません。
また、オーストラリアのツナ缶の原料ラベルには、Skipjack Tuna(カツオ)か、Yellowfin Tuna(キハダマグロ)がよく記載されています。
英語でTunaといえば、マグロのことを指すと思いがちですが、カツオもTunaの仲間になります。日本のツナ缶の原料にもキハダマグロとカツオがよく使用されており、高級品にはビンナガマグロなどが使われることが多いそうです。
日本では、一昔前はサラダオイル漬けのツナ缶が主流だったと記憶していますが、健康志向の影響か、スープ漬け、水煮、無塩タイプなども近年よく目にするようになりました。

「Purse seine」の表示があるツナ缶

「Pole & Line」の表示があるツナ缶

オーストラリアのツナ缶表示の中で、目を引く表現に「Pole and Line」があります。これは「一本釣り」という意味になります。
近年世界中でマグロの個体数が減少しており、対策を講じなければマグロが絶滅する恐れがあると危ぶまれています。特に、マグロを漁獲する際に広く用いられている、人口集魚装置(FAD)を使用した巻き網漁法が、マグロを壊滅的な状況に陥れている一因と考えられているようです。
FADでは一気に大量の魚を捕ることになるため、商品としてはあまり価値はなくても将来子孫を残すために重要な稚魚まで無選別で捕獲してしまったり、ウミガメやイルカなどのほかの生物まで捕まえてしまったりと、海の生態系に悪影響を及ぼす漁法であると指摘されています。
一方、一本釣りなら目的の魚を必要な数だけ捕獲することになるため、持続可能な漁業に貢献できます。
持続可能な漁獲方法としては、一本釣りのほかに、人口集魚装置を用いない網漁(purse seine)もあります。ターゲット以外の魚や海の生物を不必要に傷つける可能性を減らせるとして、捕る魚の種類によっては環境に優しい漁法とされているようです。
環境団体や消費者の働き掛けにより、英国、米国、ニュージーランドでは、「FADで採られた魚を使用したツナ缶を売らない」とする方針を設定したメーカーや小売業者も出てきています。

パースでは漁法の不明な安価なツナ缶も見かけますが、「Pole and Line」や「Purse seine」と明記されたツナ缶も増えています。

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投稿者プロフィール

名取 知衣子
1973 年東京生まれ。2013 年から西オーストラリア州・パースに在住。夫、ハイスクールに通う長女、プライマリースクールに通う長男の4人家族。日本と異なる生活に試行錯誤するうちに、オーストラリアの豊かな食事情に興味を持つようになる。オーストラリアのローカル食材を使って日本人が手軽に楽しめる家庭料理を研究中。レシピをブログ「パースで手作りざんまい(http://perth-zanmai.com/)」で公開している。