第20回 ガスマスク大作戦! 羊のメタン排出量を測定

オーストラリアでは、昨年7月1日の炭素価格制度(炭素税)導入から、ちょうど1年がたちました。炭素税のように、環境対策と言えば温室効果ガスの削減に焦点が当てられますが、この温室効果ガスは人間活動だけでなく、家畜も排出の主な要因になっていることについては、以前にもこのコラムで触れました。

ニュージーランド(NZ)草地農業研究所アグリサーチによると、NZの温室効果ガス排出量の内訳は、◆二酸化炭素:40%◆メタン:44%◆亜酸化窒素:14%─で、このうちメタンと亜酸化窒素の大部分は、家畜が放出しています。2つ足すと約60%で、つまりNZから出る温室効果ガスの半分以上が、家畜から出ていることになります。

オーストラリアでも牧畜は主要産業の一つですから、この事実を見過ごすわけにはいきません。羊毛業界の調べによれば、オーストラリアでは約1億1,400万頭の羊が飼育されており、1頭当たりの温室効果ガス排出量は年136キログラムにも上ります。

英タブロイド紙デイリー・メールによれば、オーストラリアではこの状況を改善すべく、羊の頭にマスクをかぶせてメタンの排出量を測定する「ガスマスク・オペレーション」が2008年に実施されました。

■羊にズボン?

なぜこのような試みがなされたのかと言えば、豪政府の気候変動顧問を務めるガーナウト氏が、羊はほかの家畜と比べて温室効果ガスを多く排出しているとの調査報告書を発表したためです。

羊を含む家畜はこれまでも、温室効果ガスであるメタンを、口やおしりから多量に排出するとして問題視されてきました。そのため研究者らは過去に、排出されるガスを集めるために、羊の下半身にプラスチック製のズボンをはかせたこともあります。

ただかなりの手間だったようで、代わりにマスクを使う方法を検討したんだとか。ただ、羊共同研究センター(SCRC)のロー教授は「羊から排出されるメタンガスの98%は、口から排出される」と指摘していることを考えれば、マスクへの切り替えは当然かもしれません。

「ガスマスク・オペレーション」では、羊の呼気を採取するのに、集められた羊の口元に約1分間ずつマスクがかぶせられました。スタッフはその後、どの品種の羊が遺伝子学的にメタンの排出量が少ない傾向にあるかについて分析しました。

■カンガルーはメタンフリー

ガーナウト教授は最近の報告書の中で、牛肉や羊肉の消費に代わってカンガルー肉の消費が進めば、オーストラリアの温室効果ガスは大幅に削減されるようになると述べています。カンガルーは温室効果ガスを排出しないためです。

ただカンガルー肉は大抵はペットのえさ用ですので、実現は難しいとの見方が大半です。同教授もそれを知ってか、「(羊と違って)カンガルーは集めるのは難しい。すぐどこかへ飛んで行ってしまうからね!」とジョークを交えて話しています。

オーストラリアでの温室効果ガス削減への道は、まだまだ遠いかもしれません。

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