第23回 干ばつ時の味方!在来植物を羊のえさに

オーストラリアは南極に続き、世界で最も乾燥した大陸であると言われています。2001年以来、オーストラリアの大部分が厳しい干ばつに見舞われており、各都市では貯水量が大幅に減少しています。

特に夏場の乾燥は顕著で、家畜の飼料となる青草が手に入りにくい時期もあるほどです。その際、干し草の購入に高いお金を払うことは、放牧を行う多くの牧羊農家にとって、頭の痛い問題でした。

しかしそんな問題に対処すべく、南オーストラリア(SA)州のある研究機関が、在来植物に関係する貴重な発見をしたのでご紹介します。

オーストラリアン紙によると、SA州研究開発所(SARDI)のジェイソン・エムズ教授が率いる研究チームは、同州の牧草地でハギや青草により羊を飼育している牧羊農家が、ソルトブッシュ(ハマアカザ属の低木)やブルーブッシュ(アカシア属の低木)、またアカザ(アカザ属の植物)を牧草地に加えた際に、羊肉の生産量と利益が24%増加したことを突き止めました。

■ビタミンEが豊富な肉に

オーストラリア国内ではこれまで、ソルトブッシュなどの在来植物は家畜の飼料として利用可能なものの、栄養分はごくわずかしか含まれていないと考えられていました。

しかし今回の研究により、在来植物の多くが放牧されている羊にとって、これまで認識されていたよりも優れた食物であることが分かったのです。

エムズ教授たちの実験では、羊が6種の異なる在来植物を一緒に食した場合、それぞれの植物が持つビタミンやミネラル、またタンパク質が互いに作用し合い、羊の健康状態を高めるのに役立つことが確認されました。また在来植物を飼料として生産されたラム肉は、ビタミンEや天然ミネラルを豊富に含むほか、深みのある赤色をしています。

これらのラム肉は「ソルトブッシュラム」と呼ばれ、最近では日本でも人気を集めています。

■費用効果は抜群

在来植物が持つ利点はこれだけではありません。緑草が手に入りにくい乾燥した夏の間、特に降雨の少ない西オーストラリア州の小麦地帯、ニューサウスウェールズ州のリバリーナ、またSA州東部などの地域で在来植物を飼料として利用することは、土壌浸食の防止につながるほか、牧羊農家は高い干し草を購入する必要もなくなります。

エムズ教授は「今回のプロジェクトで用いられた在来植物はすべて干ばつに強い品種で、羊の嗜好(しこう)に合うだけでなく、寿命が長いという利点もある」と説明。牧羊農家はこれらの在来植物を育てるのに、放牧地に10〜20年に1度植え付けを行うだけでよく、費用効果もとても高いと強調しています。

同教授はまた「これらの植物は在来種のため、さまざまな環境や土壌で育てることができる」と指摘。ソルトブッシュは海岸やその周辺などあまり肥沃でない土壌でも育つため、これまで牧草の生産に適していないと考えられていた場所も有効活用できるようになるとしています。

同研究チームはほかにも、在来植物を飼料として利用することで、羊から排出されるメタンガスの量を削減できることを突き止めています。

オーストラリアにとって深刻な問題である干ばつの際に、身近にある在来植物が牧羊農家にとって、これほど強い味方になるとは驚きです。

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