第20回 企業の将来、多様性にあり!ベロカ・ウォーターのダイさん
- 2014/10/23
- 純子の根掘り葉掘り
経済紙オーストラリアン・ファイナンシャル・レビューとウエストパック銀行による2014年の「影響力ある女性100人」で、全10部門のうち「職場の多様性(Diversity)」部門で受賞10人のうちの一人に選ばれた、ダイ・リー(Dai Le)さん。高級天然水を製造販売する、ベロカ・ウォーター(Beloka Water)の最高マーケティング責任者(CMO)でもあるダイさんに話を聞いた。
ベロカ・ウォーターは、ニューサウスウェールズ州ベロカ地域の地下水を瓶詰めし、高級レストランやカフェ、卸売り大手メットキャッシュ傘下のIGAに納入している。販売するのは何も手を加えていないスチール水と炭酸を加えた炭酸水。オーストラリアアルプスの主要部を成すスノーウィー・マウンテンズから流れ込んだ地下水にはミネラル分が多いという。複数の水源を持つ他社と違い、水源はコジオスコ(Kosciuszko)国立公園近くの井戸1カ所のみで、容器もブラスチックではなくガラス製にこだわる。水の出所が明確で人の手の加わっていない「ピュアでクリーン、プリスティーン(手付かずの清浄さ)な水」(ダイさん)が売りだ。今後は各国の航空会社やグローバルホテルチェーンなどにも製品を納入し、販路を広げたい考え。中国とシンガポールに輸出する許可をすでに取得しており、アジア市場も視野に入っている。
■均一化「限界来る」
同社は小規模のオーストラリア企業だが、職場の文化的多様性は豊かだ。創立者兼最高経営責任者(CEO)のジョー・コミッソ氏はイタリアからの移民としてオーストラリアにやってきた。引退してオリーブ畑を始めようと土地を買い、偶然井戸を掘り当てたという。ダイさんも7歳のとき、ベトナム難民としてオーストラリアの地を踏んでいる。コミッソCEOに誘われてベロカ・ウォーターに入社した。「国や文化の垣根があいまいになっていく中で、企業だけが強くバリアを張っているのは理屈に合わない」と語るダイさん。人は自分と似ている人に好感を持つ傾向があるが、だからといって似ている人を集め、均一化された職場になると多様性ある商品を生み出せず、いつか限界が来るという。ダイさん自身、採用候補者の条件が同じであれば、自分とは「違う背景」を持つ人を意識的に選ぶようにしているそうだ。異なる考え方をまとめるのは大変だが、成果も大きいという。ベロカ・ウォーターは製品のコーシャ(ユダヤ教で定める食物に関する規定)認定をいち早く導入し、飲料水としては他社に先駆けて、コーシャ認証でより審査の厳しい「P(パスオーバー、過ぎ越しの祭り)」資格も取得している。
■反映させてこその多様性
ダイさんの活動は広がる。公共放送ABCのジャーナリストを18年勤めた経験から、企業だけでなく社会や政治にも多様性を反映させることが大事だと考えている。特に組織や社会でアジア人が直面する壁、ガラスの天井ならぬ「バンブーシーリング(竹の天井)」が問題という。ダイさんは特にアジア系女性の発言力を高めることを目的とした団体「DAWN(ドーン)」を設立。来年3月の国際女性デーに合わせた会合を計画中で、参加者や参加企業の調整に追われている。日本の戦争花嫁を取材したこともあるダイさん。オーストラリアで日本人のリーダーを探すのが難しいと嘆き、「日本人はもっと発信できる」と断言する。
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