第42回 本当はうどん大国!埼玉県の特産品がシドニーに

埼玉県が26日、シドニーで「埼玉県物産&ツーリズム展」を開催した。あまり知られていないが、埼玉県は日本でも有数の小麦の産地。さらに、生産量は少ないものの味のしっかりした狭山茶など、知る人ぞ知るグルメの宝庫だ。同県の食品・酒造メーカー10社が出展した。

小麦粉の卸しや乾麺などの製造販売を行う土田物産(久喜市、つむぎや)は今回、新米ならぬ、日本で収穫したての「新小麦」を使った新小麦うどんを持ち込んだ。日本は小麦粉の9割を輸入していることから小麦粉に対して「旬」の意識が薄く、国産小麦しかも新物を使った小麦粉は貴重だ。年に一度だけしか製造できないこの県産新小麦うどんは、通常のうどんよりも水分が多くてみずみずしく、もちもちした食感を楽しめるという。

つむぎやの土田康太・専務取締役によると、埼玉県の小麦粉生産量は全国6位だが、利根川を挟んで位置する栃木県や群馬県を合わせると、生産量は北海道に次ぐ全国2位に浮上する。さらに、古くから小麦が生産され、小麦文化が根付く埼玉県では、うどんの消費量も全国2位。つむぎやは大正元年に製粉工場として創業した老舗の小麦粉屋でもある。

しかし県産小麦粉やうどんの知名度はイマイチだ。土田氏によると、埼玉は東京という巨大市場に近いことから「宣伝しなくても業務用(の需要)で事業がまわってしまい、(県産うどんや小麦粉について)しっかりしたマーケティングができていなかった」という。つむぎやは今回、初の海外出展だが、今後は海外向けの商品ラベルなども検討し、売り込みに力を入れる方針だ。

一方、「うどん県」としてのイメージを確立し、うどん消費量が全国1位の香川県では、うどんの原料の大半がオーストラリア産小麦。サッカーなどでは出場選手が互いの健闘をたたえ合ってユニホームを交換するが、「今回はオーストラリアとユニホーム交換する気持ちで」(土田氏)来豪したという。

■売り込み、姉妹提携がきっかけ

県の産業労働部観光課の高梨光美・副課長はオーストラリア市場へのプロモーションについて、「今年始まった新事業。一時的なものではなく、今後も続けて行く」と語る。県は海外初の試みとなる今回の物産展を足掛かりに、今後もオーストラリア市場の開拓を進める方針だ。

埼玉県は昨年、クイーンズランド州との姉妹提携30周年を記念して知事が同州を訪れ、訪問中に県産食品のプロモーションを行った。その際に県産食品に対する「手ごたえがあったこと」(高梨氏)が、今回の新事業につながったという。

■野菜不足の豪州で緑茶を

日本茶を幅広く扱う矢島園(上尾市)は、急須文化のない国でも日本茶が楽しめるよう、ティーバッグ「茶ぽーん」を持ち込んだ。一見日本茶とは分からない色彩豊かな包装で、贈答用としての需要も期待する。また、「野菜不足のオーストラリアで日本茶を」(鈴木道晴・常務取締役)と、茶葉を丸ごと飲む抹茶をアピール。オーストラリアでは甘い食べ物が好まれるが、牛乳などに入れて楽しめる、砂糖で甘みを加えたパウダーも用意した。

みたけ食品工場(戸田市)はオーストラリアでグルテンフリーが注目されていることを踏まえて、グルテンフリーのてんぷら粉やケーキミックスなどを持ち込んだ。また日本人向けに、気温の高いオーストラリアでも冷蔵庫で手軽にぬか漬けを作ることができる「発酵ぬかどこ」を用意した。

ほかに、弓削多醤油(坂戸市)、三上製麺(所沢市)、飯田屋商店(行田市)、釜屋(加須市)、新井武平商店(秩父郡)、おづつみ園(春日部市)、越生特産物加工研究所(入間郡)が出展した。

公式SNSをフォロー