第47回 おにぎりに込める日本人の心!俳優の宇佐美慎吾さん

米ハリウッド大作映画も撮影されるオーストラリアの映画業界。大阪出身でシドニーを拠点に俳優として活躍する宇佐美慎吾さんがこのほど、「普通の日本人の姿を描きたい」と、初の短編映画「RICEBALLS」を制作した。日本の家族や食卓を象徴するおにぎりを通じて、オーストラリアに住む日本人の父親とハーフの息子の交流を描くストーリーだ。監督、製作、脚本、主演と一人四役を務めた宇佐美さんに話を聞いた。

宇佐美さんが日々直面するのは、言葉の壁に加え、白人中心のオーストラリアの芸能界。ドラマや映画はもちろん、航空会社やスーパーマーケットなど大手企業のテレビコマーシャルも出演者は白人ばかりだ。日本人として声がかかる役も兵隊やヤクザなど、「悪役」が多いという。悪役を演じたくないというわけではないが、「日本人の役が紋切り型で限られていることについて、どうにかしたいと思っていた」(宇佐美さん)という。

そこで宇佐美さんは、オーストラリアに暮らす普通の日本人が登場する作品を「自分で書くしかない」と決意。独立系の映画制作を支援するシドニー拠点の非営利団体メトロスクリーンの支援事業に応募し、応募約100作品の中から見事最後の8作品に選ばれた。このメトロスクリーン、連邦政府による芸術予算削減のあおりで昨年末に閉鎖されて34年の幕を閉じており、「RICEBALLS」は最後の支援作品の一つとなった。

宇佐美さんや制作スタッフはその後、クラウドファンディングを通じた資金調達にも成功。東芝オーストラリアからはラップトップ、日本食材卸のジュンパシフィックからは食材などの提供を受けた。さらには、「(食品メーカーの)ディックスミスフーズにもお世話になりました」と宇佐美さん。映画ではオーストラリアの食材を代表して「べジマイト」が間接的に登場するが、商品の使用に米本社から許可が下りず困ったそうだ。撮影が迫り、同様の製品「オージーマイト(OZEMITE)」を展開するディックスミスフーズに使用を申し入れたところ、快諾してくれたとか。

■思いを込めたおにぎり

映画に登場するのは宇佐美さん演じる、オーストラリア人の妻を亡くした日本人の健二と、息子のジョシュ。日本語教育に携わり日本語補習校で教えた経験もある宇佐美さんは、親が日本人でオーストラリアで暮らす子どもたちが、日本語や日本人としてのアイデンティティーを保つことの難しさを見てきた。映画でも、息子に「自分はオーストラリア人」と言われてショックを受ける親の姿も描かれる。

日本的だがあまり海外で普及していないおにぎりを映画で使うきっかけとなったのは、母親が「キャラ弁」で子どもにメッセージを伝える日本のテレビコマーシャル。食べ物に思いを込めて伝える、という日本的な行為で、キャラ弁が作れない父親だったらどうするか、と考えたそうだ。

また以前、パースの兵庫県文化交流センターで日本語のワークショップを行った際、一番人気があり、その後も定着したのが「お弁当ワークショップ」だったそうだ。食を通じた取り組みは、「食育はもちろん、言語や文化など幅広く日本を伝えることができる」という。

■映画祭に出品

現在は作品を日本やオーストラリアを含めた国内外の映画祭に出品しており、先日は北米のある映画祭に受け入れられた。映画祭への出品が終わり一段落したら、「オーストラリアで子どもを育てている日本人や、日本のバックグラウンドを持ちながらオーストラリアで育つ子どもたちなど、幅広い人に映画を見てもらいたい」そうだ。

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